内容説明
歌麿の「幻の傑作」が発見された?美術界をゆるがすかもしれぬ事件に雑誌編集者の杉原は勇み立ち、研究家の塔馬双太郎の助力をたのむ。しかし、それは巧妙な贋作だった。そして思いがけず、歌麿は謎の絵師写楽でありえたことまで証明されて…。浮世絵ミステリの白眉といえる秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
52
『写楽殺人事件』『北斎殺人事件』のような柄の大きい長篇ではなく、塔馬双太郎を探偵役に据えた短篇集。浮世絵の秘密を解き明かす歴史ミステリ的な楽しみは少ないですが、美術業界の裏話的なトリックの味わいは軽くてとても読みやすいです。2024/11/05
icchiy
13
浮世絵の贋作をめぐる物語。これは面白いです。高橋先生が実際詐欺師になったことを想定して贋作とそれを売りつける詐欺手法を考えたそうです。浮世絵と言っても大御所の絵師のは数千万。かなりのビジネスです。この他に北斎をテーマにした小説もあるのでしばらく楽しめそう!2019/10/28
紫
12
贋作詐欺テーマの連作短編集。浮世絵テーマの小説を描かせたら並ぶ者のない高橋克彦先生。語り口こそは軽いタッチですが、あの手この手で持ち出されてくる贋作のテクニックはシンプルながらも実に巧妙。同時に業界の内情やいびつさも生臭く描かれており、著者の嘆きが伝わってくるようです。なお本書の記述形式は杉原くんの一人称。他の作品で登場した時とはキャラクターがずいぶん違った印象なのが愉快であります。東洲斎写楽=歌麿説を扱った一編もあるのですが、こちらは同じ著者のデビュー作『写楽殺人事件』の方が説得力があったかも。星5つ。2015/10/22
ロックイ
10
殺人ではなく殺贋とはなんぞやと興味が抱いて手に取った作品。どうやらシリーズ物だったようですが、連作短編形式で描かれているので問題なく入り込めました。浮世絵研究者と美術雑誌記者が、詐欺のような美術商取引を暴いていくお話でした。以前、「せどり男爵…」を、読んでいたので、芸術世界の恐ろしさは経験済みだっただけに怖さ二割増しでした。暴く側の塔馬の切れ者ぶりが拍車をかけます。目には目を、詐欺には詐欺を。ですか。2019/09/01
ヤギ郎
9
美術史研究者と美術雑誌編集者のバディが歌麿の贋作が絡む事件を解決していくミステリー短編集。美術や浮世絵についての知識に関する説明は少なく、フィクションの要素が強い物語となっている。浮世絵の鑑賞するため価値や所有欲を満たすための価値など、美術品にはいろいろな側面があることを感じさせる。浮世絵師の説明は少なかったが、写楽・歌麿同一人物説について詳しく書かれている。美術とミステリーを掛け合わせた物語。2022/07/18
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