内容説明
み…美恵ちゃん…娘たちの喉を突き破って金切声がほとばしった。ふくよかな女の胸には1本のナイフが突きささっていた。Z2を駆って芹沢顕二は単身、犯人を捜しに走る。そこへ現われた“青い仔猫”という美貌のライダー。そして盲目のピアニスト怜子。疾走する青春群像を生き生きと描く江戸川乱歩賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MIKETOM
7
第33回乱歩賞。作者は当時24歳で乱歩賞最年少作家らしい。本書はそれがウリの一つらしいのだが、読んでみるとウリよりもむしろ若さゆえの未熟さや欠点が目につく作品だった。筋立て、文章、そして登場人物のキャラと会話。大人に反抗的な態度を取ることがカッコいいと、作者自身が思い込んでいるようなところが無きにしも非ず。いい大人の目から見ると思わず苦笑してしまうような部分が沢山あった。トリックやらストーリーそのものはまあまあなんだけどね。ZⅡは、俺たちの世代では憧れの、神のような存在のマシンだった。乗りたかったなあ。2016/10/29
東森久利斗
2
”探偵小説の奨励”、推理小説新人の登竜門”乱歩賞”の趣旨に相応しいトリック、登場人物、舞台設定。なぜ? どうして? が置き去りとなる、どうやって?、重視の内容、トリックの謎解きから犯人特定へと到達する展開にならざるを得ないのは探偵小説の宿命か。新人から売れっ子、人気作家、さらには大御所へと進化、成長するには、避けては通れない課題。クリープを入れないコーヒー、入れたコーヒー、好みがわかれるところではあるが。2020/10/30
hit4papa
0
江戸川乱歩賞を最年少(24歳)で受賞した作品です。バイクで疾走するシーンは臨場感があって、作者がバイク小説家と言われ由縁が良くかります。しかし、ミステリとしてけっして良い出来ではありません。もう少し丁寧に書き込んでくれれば納得できるのですが、瑕疵とはいかないまでも気になるところが多く、残念ながら隔靴掻痒というしかありません。
capa
0
第33回江戸川乱歩賞受賞作 2013/08/05
アヴィ
0
80年代の二輪ブームの最中に、オートバイ小説であり、本格推理小説である本作が乱歩賞を受賞したのも時代の要請だったのだろうか。バイク部分は主人公の跨がるカワサキZⅡ始め、当時から伝説の名車だったCB750Fや走り屋御用達だったTZRなど時代を現すアイテムとして懐かしい車名が並ぶ。本格部分はバイクよりも音楽が重要な意味を持ち、殺人現場の見取り図は本格への想いを感じる。当時の乱歩賞史上最年少での受賞が重荷になったのか、その後大きな活躍がないままフェードアウトしていったのが惜しまれる。2025/04/24