内容説明
正体不明の船のやとわれ船長だったわたしは、2度目の出航で親友の成瀬と交替した。ところが成瀬は殺される。船に疑惑を抱いた彼は、ひそかに何かを探っていたらしい。わたしが友を殺した敵を追い求めると次々奇怪かつ危険な徴候に襲われ…。美しい大自然と人間の悪を精緻に描く秀作。日本推理作家協会賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やなお
5
ハードボイルド小説。結構弱くて女々しい主人公で面白かった。 最後の謎解き部分も悪くはなかった。古さは感じなかった。2015/11/25
Tetchy
5
『飢えて狼』、『裂けて海峡』、『背いて故郷』とシミタツの冒険小説三部作と云われており、しかも本作は日本推理作家協会賞受賞作である。前2作は私のお気に入りでもあり、さらにこれはその上を行くのかと期待して読んだが、案に反して琴線に触れなかった。とにかく長いと感じた。しかもなんだか主人公が自虐的ながらも自分勝手な性格で、自分に酔っているという感じが終始拭えなかった。まあ、本作も海洋業を生業とする人物設定であるから、ちょっと飽きが来たのかもしれない。北国の寒さだけが印象に残った。2009/10/10
たーくん
3
第六協洋丸、仮想敵国の領海に接近するためのスパイ船。柏木はその仕事を好まず、親友・成瀬に船長の座を譲った。だが成瀬は当直中に殺されてしまう。撮影済みのフィルムを奪われて。禁忌に触れてしまったとでもいうのか?柏木は北の大地を餓狼の如き切実さで駆けめぐった。ただ真相に迫りたかったのだ。彼の前に立ちはだかるのは“国家”、そして―。日本推理作家協会賞受賞作。 2017/01/08
きのやん
2
後味悪い結末だった。登場人物がかわいそうになるくらい。文章はうまい。ただ、初出の「私」がそれ以降は「わたし」になっている。校正者が気づかなかったんだろうか。当時は校正にも費用を出せた筈だが。2020/09/04
たなかはん
1
恥ずかしながらこれまでシミタツを通らずに来た。特に理由はないが、縁がなかったというだけのことだと思う。この前読んだ北上次郎の本に登場したので読んでみた。これがシミタツ節というものか。もっと早く読んでいればよかった。冒険小説はやはりいいものだなと、改めて思った。 ラストは全然思ってもみなかった結末だった。ハッピーエンドは想像していなかったが、主人公にとってあまりにも辛い結末だった。2025/01/30