感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めしいらず
58
人は順調だった人生から如何にして逸れ転落していくのか。悪意に傷ついた人を助けたいという善意が出発点だった筈なのに。強烈な悪意の前で彼の善意は如何にも貧弱だ。その優しさに見え隠れする気弱さ、幼さ、虚栄、打算、体面。彼は若過ぎた。彼を貶めんとする者も、庇ってくれる者も、彼への違和感は共通だ。人の気持ちを悉く読み違え、片手落ちの正義を笠に着て暴走し、遂には一線を越えてしまうのだ。しかし彼の経る感情の移ろいは私たちのそれとどれほど違うと言えるだろう。人生の暗転はいつでも誰でも起こり得る。感情の罠は其処此処にある。2019/11/20
まち
1
最初は小さな事件が、読んでいくとあれ?と違和感を覚える。少しずつズレていって、なんとも言えない不安に襲われる。主人公は一見すると普通の警察官だか、そこも読んでいくと微妙にズレていて得体の知れない怖さがある。 また、主人公の異常性を引き出したのは実はちょっとしたこと、周りの無意識の影響だったりして。 ふとしたところにいつだって闇があると言われているような、なんとも不安にさせられるハイスミスらしい作品でした。2017/06/25
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- 和書
- できれば航海日誌