出版社内容情報
少年は親友を守るため、子どもの王様の“謎”に立ち向かう!
団地に住む、少年ショウタと親友トモヤ。トモヤは学校に行かずに、部屋に籠もって本ばかり読んでいる。
そんな彼がするのは、いつも奇妙なつくり話。団地に住む魔女の話や、子どもの国を支配する残酷な王様の話……。
だが、ある日ショウタは、トモヤが言ったとおりの格好の男を目撃する。まさか、子どもの王様は実在した!?
内容説明
団地に住む、小学生のショウタと親友トモヤ。トモヤは不登校で引きこもり。読書三昧の日々を過ごしている。その彼がする途方もないつくり話―近所に魔女が棲んでいる、団地の外に世界がない、子どもの国は残酷な王様が支配している―。しかし、ある日ショウタはつくり話通りの格好の男を目撃する。まさか子どもの王様は実在した!?―。
著者等紹介
殊能将之[シュノウマサユキ]
1964年福井県生まれ。1999年『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
29
これは子供向けにはどうかと思うぐらい厳しい内容だ。ヒーローものに嵌まり、自転車で遠出して、ちょっかいを出しあう、リアルな小学校男子の生活。その中に組み込まれた「子供の王様」や「団地の魔女」という子供ならではのベールに包まれたものが、大人の目からすれば簡単に見えてしまうだけに、より生々しく浮かび上がってくる。めでたしめでたしではなく苦さのある締め方は、突き放しているようでいて実は著者なりの優しさ。しかし、ヒーローものの元ネタがワーグナーって(笑)。2015/07/27
Te Quitor
19
大人には謎でも何でもない話だが子供が読むことで大きな物語へと変化する作品。純粋とは言えない大人の世界を子供目線で描いている。あまり後味の良い結末ではないがラストの主人公ショウタのセリフが印象深い。「児童書」というよりは「児童だった人向けの書」だろうね。少年時代を少し思い出した。2015/03/01
しろ
15
☆6 殊能さんだからもっともの凄いのを想像していたけど、案外綺麗にまとまった普通の?小説。ジュブナイルだからしょうがないけど。「子どもの王様」とは誰か、ショウタは親友のトウヤを「子どもの王様」から守れるのか。家庭環境であったり、母親との関係性とか、なんかしんみりと心に入り込んでくるいい感じだった。小粒な作品かもしれないけど、読み終わってみればこのタイトルは皮肉だし、ショウタが「子どもの王様」の正体を知ってしまった時、もう純粋ではいられなくなったり、軽いものではなかった。2012/09/03
takahiko
12
この作者の作品だけに覚悟はしていましたが、ほろ苦く決して後味がいいものではありませんでした。途中、「大人になんか、なりたくない!」と心の中で叫ぶ場面が有り、事件の後に「大人になりたいな」の言葉に含まれた意味の重みが切なく響きました。2012/11/09
karatte
11
奇しくも麻耶雄嵩がミステリーランドから上梓したのも"○○様"繋がりの『神様ゲーム』で、そちらは発売後すぐに買って読んだのだが本作は今ひとつタイミングが合わず、ようやく読むことができた。共通するのはジュブナイルらしからぬ後味の悪さ。もちろん相違もある。神様ゲームが論理の介入を拒絶する非現実的要素を多分に孕んでいるのに対し、本作はあくまで現実的。子どもにとっての等身大の世界を淡々と描き出している。故に派手さには欠けるが、そこは好みの問題。あ、そういやノベルス版『夏と冬の奏鳴曲』の表紙もパルジファルだっけ。2013/03/04