出版社内容情報
刀城言耶シリーズ初の学生時代の事件簿! 刀城言耶の学生時代の事件簿が登場。言耶がいかにして名探偵になっていったのか…!?本編のような長編ではなく、シリーズ初読の人にもうってつけの短編集!
内容説明
刀城言耶は、大学の先輩・谷生龍之介から、幼い頃疎開していた本宅での出来事を聞かされる。訥々と語られたのは、『生霊』=『ドッペルゲンガー』の謎だった。怪異譚に目がない言耶は、その当時龍之介が見たものが何だったのか、解明を始めるのだが…(「生霊の如き重るもの」)。表題作ほか4編を収録した、刀城言耶シリーズ短編集最新作。
著者等紹介
三津田信三[ミツダシンゾウ]
奈良県出身。編集者を経て2001年『ホラー作家の棲む家』(『忌館ホラー作家の棲む家』と改題し講談社文庫)でデビュー。その後、本格ミステリと民俗学的見地に基づく怪異譚を融合させた『厭魅の如き憑くもの』(講談社文庫)を発表。今までにない作風がヒットし、「刀城言耶シリーズ」として多くのファンを掴むことになった。2010年には同シリーズ6作目にあたる『水魑の如き沈むもの』(原書房)で第10回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
63
再読。「歩く災厄」とも言える阿武隈川烏先輩の強烈さで霞 そうですが、怪談になると刀城言哉も先輩が引く位にどっこいどっこいだと気づく。それに先輩のお陰で丁重に扱われたり、怪談が聴けるので結果オーライではないでしょうか(笑)「屍蝋」のアレは文字にしないと絶対、分からないトリックだから仕方ない。そして自分が掛けた呪が跳ね返ってくるようなラストのように見えますが、私はあの人も「居なかった」という理由で加担したからこそ、還ってきたんじゃないかと思ってしまうのです。「天魔」のラストの存在感の凶に出そうなのも怖い。2018/09/08
yukaring
62
刀城言耶の学生時代の事件簿で若き日の彼の推理が光る怪異譚。今回は先輩である"クロさん"こと阿武隈川烏との絡みが多めなのがユーモラスで笑える。何もない雪の中に点々と足跡が残る「死霊の如き歩くもの」当主のドッペルゲンガーが現れるという谷生家で起こる奇妙な殺人「生霊の如き重るもの」などどれも不可解で不気味な事件にすっかり引き込まれる。特に面白かったのは即身成仏して屍蝋化した遺体が復讐のために夜な夜な墓所から這い出してくるという『屍蝋の如き滴るもの』今回はホラー色が少し強めだが謎解きとのバランスもよく楽しかった。2024/01/16
藤月はな(灯れ松明の火)
42
涼を取る夏と言えば怪談が好ましい時期となりました。だからこそ、刀城言哉の学生時代を描いた怪異譚シリーズに胸が躍りました。ミステリーは一気に解決するタイプが多いですが大抵は読み返すと穴があることに気づきます。しかし、このシリーズは徐々に推理の齟齬を埋めていき、最後には怪異は解明されないのがたまらなく好きです。特に「顔無」はミステリーの盲点を突かれて感嘆しました。阿武隈川先輩みたいな厄介な人は人生でも一人は出会うんだよな(苦笑)でも刀城君も怪異譚好きでは圧倒しているのでその勢いでのしちゃえ(笑)2011/07/27
こっち
30
刀城さん作家デビュー前の短編集。阿武隈川烏の恐ろしさと、父冬城牙城の名前を出されるだけでスイッチが入る刀城さんを知れて、大変満足です。ミステリとして楽しめたのは「屍蝋の如き滴るもの」で一番しびれたのは「天魔の如き跳ぶもの」。少女を救うべく土下座までする姿と、最後まで諦めず真実を求め続けた刀城さんに惚れてしまいそうになりました(笑)。それにしてもそろそろ父上の話も読みたいです!2015/12/30
眠る山猫屋
28
刀城くん学生時代、そしてとうとう噂の破天荒な先輩が姿を現す(笑)阿武隈川先輩、凄まじいです。ある意味、三津田さんの創造した最凶のモンスターかも?身近にいたら悪夢ですね。 しかしながら今回の連作短編集、いずれも悪夢じみた結末を迎えます。刀城くんお得意の二転三転する推理は、やや控えめの感もありますが、結末にひかえる恐怖の余韻…ミステリの境界線を踏み越えちゃってます。2011/11/09