内容説明
誰もが三百六十五日分の一日で終わる予定でいた六月六日。鏡家の三女、鏡佐奈は突然の大地震に遭遇する。液状化した大地に呑み込まれていく校舎を彩る闇の色は、生き残った生徒たちの心を狂気一色に染め上げてゆく―。衝撃の問題作、『クリスマス・テロル』から三年の沈黙を破り、佐藤友哉が満を持して放つ戦慄の「鏡家サーガ」例外編。あの九〇年代以降の「失われた」青春のすべてがここにある。
著者等紹介
佐藤友哉[サトウユウヤ]
1980年生まれ。2001年、「フリッカー式鏡公彦にうってつけの殺人」にて第二十一回メフィスト賞を受賞。90年代に十代のすべてを消費したいちばんはじめの作家としてデビューする
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感想・レビュー
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東京湾
24
本気になって、飛ぶ。突然の大地震による液状化で地中へ沈んだ中学校。その死屍累々の修羅場から決死の脱出を試みる少年少女たちの、異色青春譚。これは面白い。例外編とはよく言ったもので、凄惨さや狂気はこれまでの鏡家サーガと同様に、そこに加えて懸命にもがく少年たちの、不格好ながらも輝かしい姿が描かれた、この作家の新境地を垣間見ることのできる物語だった。特に群像劇として巧くできていたと思う。ただし『闘牛』に関わる一連のバイオレンスとオチで「あっこれ鏡家サーガだわ」と再認識させられる。そういうところもまた流石だ。2017/04/26
サイバーパンツ
13
確かにこれは例外編だなあ。鏡家サーガの中の一つとして、『フリッカー式』での疑問点を埋めるような形で読むと面白いけど、単体だと弱い。ミステリ性が完全に消えているのはともかく、変に希望を持たせるのは佐藤友哉っぽくない気が。あと他の作品もそうだけど、本作は特にロスジェネ色が強かったように思う。状況設定がもろ「希望は戦争。」をシミュレーションしたような感じだし。2018/06/04
マヌヌ2号
10
鏡家サーガに連なる作品にしては真面目で真っ当で、「例外編」という形容が完全にドンピシャですね。開始1ページで学校が半壊するし、人が沢山死ぬし、脳味噌とか眼球とか内蔵とか腸が一杯出てくるんですけど、それはともかく超真っ当でした。まさか鏡家サーガで「引きこもってないで外に出よう」「がんばれば人生なんとかなる」みたいなことが語られるとは思わなかった。壊れているようで壊れていなくて、普通で、希望に満ちている、まるで鏡佐奈みたいな小説でした。まぁ『フリッカー式』に繋がる話なので、それだけでは終わらないんですが……2018/10/27
ちょん
9
面白かった。とても好きな世界。想像力フル稼働。このシリーズは、「水没ピアノ」を一番先に読んでしまったので、少しずつ遡って読んでいきたい。最後は、悲しくなったけど、本当のところの真実はわからないところ。だって、鏡家サーガですから。2012/11/05
まめまめ
5
このシリーズを読もう読もうと思って何年も立ち、ようやく読めた。キャラと役割がぐちゃぐちゃしてて読みごたえあった(笑)2016/09/10