内容説明
十八世紀のイギリスで、行商人チャップマンが日用品とともに売り歩いた素朴な廉価本―チャップ・ブック。安価で手軽に面白い話が読めることで、庶民に大いに愛された。占い、笑話、説教、犯罪実録、『ロビンソン・クルーソー』などの名作ダイジェスト…その多様なジャンルの読み物を人々はどう楽しんだのか。本の受容を通して、当時の庶民の暮らしぶりを生き生きと描き出す。
目次
プロローグ チャップ・ブック
第1章 様々のチャップ・ブック―宗教書・実用書・旅行記
第2章 庶民たちの愛したもの―笑話集・占い・魔女
第3章 名作ダイジェスト―『ロビンソン・クルーソー』を中心に
第4章 チャップ・ブックの精神―伝説のヒーローたち
第5章 歌物語の系譜―バラッドからナースリー・ライムまで
第6章 犯罪実録の盛衰―ニューゲイト小説への道
第7章 無名の作者たち―「グラッブ・ストリート」からハンナ・モアへ
第8章 チャップ・ブックの出版と流通―ダイシー、キャトナック、そしてチャップマン
エピローグ 消えゆくチャップ・ブック
著者等紹介
小林章夫[コバヤシアキオ]
1949年東京生まれ。上智大学大学院文学研究科修了ののち、同志社女子大学教授を経て、上智大学文学部教授。専攻はイギリス文学、文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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timeturner
6
チャップマンが日用品とともに売り歩いた廉価本・チャップ・ブックは、素朴な木版画が魅力ではあるけれど内容は単純で現代人には楽しめないと思っていた。でも、庶民向けの実用書は当時の暮らしぶりを知るには最適の歴史資料。手に入るものなら読んでみたい。2019/06/21
つまみ食い
2
有名な小説作品のダイジェスト、児童文学、子供の教科書、流行歌集、ジャーナリズム・ゴシップのメディア…さまざまな側面を持つチャップ・ブックの隆盛と衰退を描く。講談社学術文庫に入る前の版は参考文献がしっかりとついていたらしいがこの文庫版にはなく、それだけが残念2020/09/01
gkmond
1
読んだからどうこうということもないけど軽く読み飛ばす分には楽しくてよかった。2024/11/28
富士さん
0
再読。ステータスの高い文化はお仕着せみたいなもので、内容を楽しむ以上に、それを嗜んでる偉い自分を演出するために消費している側面があるものです。何の衒いもなく、ただそれを知りたいがために選び取られた文化にこそ、真にその人たちの心性が反映されており、そういう点で最も注目すべきジャンルだと思います。それに、この手の本は江戸時代の日本が識字率との絡みで語られることが多いですが、ただのお国自慢に陥ることを避けるためにも、同じようなメディアの他地域でのあり方をフォローするのは必須であり、本書はそのためにも貴重です。2016/12/29