内容説明
民主主義は時代の潮流であり、世界の正統思想であり、また、現代政治のキーワードともなっている。理想の政治、民主主義とは一体どのようなものなのか。ギリシア史家の第一人者が、古代民主制の模範的都市、アテナイの政治の仕組み、機能、問題点や補完策などその実態と本質を功罪両面から学問的に的確に分析し、現代の民主主義のあり方を考える政治学の名著である。
目次
第1章 指導者と追随者
第2章 アテナイのデマゴーグたち
第3章 民主主義、合意および国益
第4章 ソクラテスと彼以後
第5章 古典古代における検閲
著者等紹介
フィンリー,M.I.[フィンリー,M.I.][Finley,M.I.]
1912年ニューヨーク市生まれ。コロンビア大学で博士号取得。専門は古代ギリシア史。1954年英国に渡り、のち帰化。ケンブリッジ大学名誉教授。ナイトの爵位を授与される。1986年没
柴田平三郎[シバタヘイザブロウ]
1946年東京生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。獨協大学法学部教授。専攻は西欧政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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那由田 忠
22
プラトンやツキディデスの記述から欧米では、アテネの直接民主主義はデマゴーグに支配された衆愚政治だったと理解されることが多い。フィンリーは古代ギリシアの社会構造を深く理解していて、こうした評価を具体的に批判する。民会にどんな人々が参加するかわからず(政党のような派閥は嫌悪されて存在せず)誰も民衆決定を左右できる自信がなかった。民会決定で戦争が始まり自ら参加するので、民衆がいい加減な決定をすることはなかったと。ソクラテスやソフィストの新規な主張は、伝統にとらわれた民衆から反発を受けたのだと説明する。良書だ。2019/11/18
Mana
5
語りかけるような文体なので読みやすい。読みやすいんだけど語ってる内容が複雑なので読み終わっても論旨を明確には理解できていない。とりあえず理解できたのは民主主義という概念自体明確なものではない、現代の民主主義と古代ギリシアの民主主義は同じではない、古代ギリシアの民主主義も色々あった、現代の民主主義は大衆が政治に無関心であるから成り立つということぐらい。あと古代ギリシアの歴史を知らないと要所要所で出てくる戦争とか人名とかが分からないからまた今度読み返したい。ただ分からなくてもちゃんと読めると思います。2016/01/31
しょ~や
2
古代ギリシャにおける民主主義と現代のそれが本当に異なることを再認識した。一方で、現代の政治の在り方を民主主義の理想と比べることの難しさを思う。2016/11/20
ねぎとろ
2
民主主義批判をする人たちはよく古代ギリシャを引き合いに出して、その欠陥をあげつらう。しかし、細かくみると、ギリシャ人たちはその当時の社会的状況に合わせた政治をしていたのであって、時代の文脈を読みとらずに古代ギリシャの失敗=民主主義の欠陥とするのは早計ですよ、という歴史学者の本。あと、プラトンは当時においてかなり特殊な人物だったので、彼の意見を古代ギリシャのスタンダードなものとして受け取ってしまうと物事を見誤るという話は、参考になった。2011/07/05
ただの人間
1
近現代の民主主義との安易な混同を戒めた上で、古代ギリシアの民主主義を極めてフラットな視点から論じていく。デマゴーグなどの用語やソクラテスの処刑などの出来事をそれぞれの要素の関連性に重点を置きつつ論じられるので、諸要素の機能と帰結としてのそれぞれの出来事のいずれをも立体的に感じ取ることができる2020/12/31