内容説明
朝鮮語と中国語を自在に操る対馬藩の儒者に、朝鮮通信使は称賛の言葉を惜しまなかった―。木下順庵に学び、新井白石・荻生徂徠との交友を通して研鑽された芳洲の思想は、言語哲学に発し、偏見を排した文化・民族の平等理念へと昇華する。江戸時代、日朝親善の先駆者となり今日的思索を展開しながら、国学の擡頭により忘れさられた思想家が現代に甦る。
目次
序章 雨森芳洲―忘れられた思想家
第1章 町医者の子
第2章 木下順庵に学ぶ
第3章 対馬で実務見習い
第4章 朝鮮外交に活躍
第5章 思索と教育の晩年
著者等紹介
上垣外憲一[カミガイトケンイチ]
1948年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は比較文化・比較文学。国際日本文化研究センター助教授を経て、帝塚山学院大学教授
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
28
「世の中はあひもちなり」。個人から国まで、相互依存の関係であることを看破し、偏見を排し、朝鮮通信使との外交に「誠信」の心であたった芳洲こそ、真に国際人の名に値する人だろう。同時代ヨーロッパの人道主義、平等主義に驚くほど近いと本書で述べられた思想は、実務経験に裏打ちされたしっかりしたものであり、私は近江出身の思想家というと、まずは雨森芳洲をあげたいと思う。2016/08/20
きさらぎ
2
「芳洲は温厚篤実、誠心誠意を絵に描いたような、バランスのとれたマジメ人間だったが、その真面目さが行きつくところまで行きつくと、ついに「畸人」の域に達してしまう」いや~これは素材(人物)といい書きぶりといいとてもいい本だった。幸せな読書をした。個人的に「人となりが生き生きと伝わってくるか」というのがすごく重要なんだけど、これはまさに目前に芳洲さんをありありと見る思いで読めた。暖かく誠実で努力家、出世欲はあるけど信念は曲げない芳洲さん本当に素敵でした。2014/08/13
oryzetum
1
異なる文化に接したとき、拒絶と侮蔑ではなく学習と理解をできる人は、現代でもそうはいないだろう。雨森芳洲という儒者は、対馬藩に奉職し、外国との交流が極端に制限された江戸時代中期の日本において、中国語と朝鮮語を習得して他文化に関する理解を説いた。更には、理にのみ走るのではなく外交でも実務的な成果を残したという。心から尊敬する。2025/11/30
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