内容説明
過酷な迫害と死の体験者、ディオニュソス。理智・端正・青春と明るい光のイメージのアポロンに対し、反理性・激情・狂乱と人間の内奥深く闇の中に棲む神、ディオニュソスとは一体どんな神なのか。雪の北ギリシアから青いエーゲ海の島々へ。謎深き神との内なる対話を交わしつつ、情念の根源から女性の心を解放した神の本質を探るギリシア神話紀行。
目次
酒―人の苦悩を癒すもの
秘儀―熱狂と解放
ディオニュソスとアポロン―オルフェウスをめぐる二つの顔
結婚―両性具有者の愛
迫害―相容れざるものの風土
演劇―仮面とディーテュランボス
著者等紹介
楠見千鶴子[クスミチズコ]
1938年、広島県生まれ。学習院大学文学部国文学科卒業。第10回作家賞受賞。大学卒業後、古代ギリシアに興味を持ち、現地での旅・研究を重ね、神話・美術・音楽などに関する著作に専念
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感想・レビュー
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N島
10
作者が培った「知識」、旅先で採取した「伝説」、現地で直に触れた「空気」をもとに作られた、素朴で美しい「地中海料理」のような作品です。作者自身の「情熱」で醸された「ウーゾ(アニスで香りづけされた蒸留酒)」と共に味わうことができなければ、この料理の魅力は半減してしまうと思います。美酒に酔い、朦朧とした意識の先に、陽炎のような神様の姿を追い求める…そんな趣に浸れる方にお薦めできる一冊です。2016/06/30
くぬぎ
1
ディオニュソス論かと思ったらかなり主観に偏った紀行文だったという印象。読み物としては大変面白かった(この神を理性で噛み砕こうとする方が間違ってると思う。読みながら著者と共に酔う感じ)。ディオニュソス神話は一つではなく、土地ごとに様々なバリエーションがある事を知った。死を経験し、迫害を受けた経緯を持つ、限りなく人に近い神の特異性がとても興味深い。2010/12/03
コマイヌ
0
もっと信頼のおける本から考えて違う事も書いてあるので神話をモチーフにした××の旅行記って認識が良さそう。位置関係が分かりやすく読みやすい。2016/12/21
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- 和書
- 帝都異聞 小学館文庫