内容説明
『源氏物語』の作者、紫式部の綴った宮仕え日記は、平安朝宮廷社会を克明に描写した貴重な風俗資料である。安産を願う加持祈祷、若宮誕生、初孫に目を細める道長。そして、御湯殿の儀式、豪奢華麗な御産養、一条天皇の土御門第への行幸など次々と繰り広げられる祝儀や賀宴。親王誕生の慶びに沸く御堂関白家の様子を、中宮彰子に仕えた式部が伝える注目すべき日記の全訳注。
目次
秋のけはひ入り立つままに―冒頭・秋色増す土御門殿の風趣
まだ夜ぶかきほどの月さしくもり―五壇の御修法の荘厳さ
渡殿の戸口の局に見いだせば―道長との女郎花の歌の贈答
しめやかなる夕暮に―殿の三位の君のすばらしさ
播磨の守、碁の負わざしける日―洲浜の装飾台に書かれた歌
八月廿余日のほどよりは―宿直の人々の管弦の遊び
廿六日、御薫物あはせはてて―弁の宰相の昼寝姿
九日、菊の綿を―殿の上への返歌
その夜さり、御前にまゐりたれば―薫物の試みなど、御前の様子
十日の、まだほのぼのとするに―盛んな加持祈祷の様子〔ほか〕
著者等紹介
宮崎荘平[ミヤザキソウヘイ]
1933年生。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。国文学(中古文学)専攻。現在、国学院大学文学部・大学院教授。新潟大学名誉教授
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感想・レビュー
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ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
6
恐らくは鳴り物入りで中宮家に抱えられ、大いなる信頼を置かれる女房となりながら、宮仕えの憂鬱は増してゆく。紫式部が憂愁の人であり、つまりはアーティストなのだということが、日記から強く伺い知れる。2016/09/04
zoros
3
紫式部から見た道長がおおらかで素敵だ。皇子がうまれ、ますます栄華をきわめていく風景を喜びながら、式部の心のうちはなぜか憂いがある。 2025/02/20
星菫
1
歴史上の人物が日記という形の中に出てくると急に生身の存在になるような、なんか不思議な感じがした。女性の容姿にすごく敏感で惹かれているようで、「紫式部って百合っけがある?」と思ってしまった。2024/04/11
ドウ
1
中宮彰子の出産前後の日々を、その記録ではなくそこに登場する人々の外見・内面に着目して綴られた日記。上巻は出産前の慌ただしさと出産祝いの儀式がメイン。「日記」という言葉から想像していたものとは大分違って、現代で言えばエッセイに近い気もする。冒頭の一節の描写がたいへん美しい。道長との和歌の贈答で、自分の歌の内容が優れているとは言わずに返歌が速いとのみ記すのは、『源氏物語』から相変わらずで、それも批判してる「われぼめ」にあたるんじゃないかなと思ったり。2015/04/24
しろこ
1
ものすごくデキる女なのに日記が暗いというギャップ
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