内容説明
江戸時代前期の代表的思想家、山鹿素行は、日常から遊離した官学(程朱の学)を排斥したことにより幕府の忌諱に触れ、配流の身となって波瀾の人生を送る。直接古代聖賢の教えに学ぶべしと説く古学の立場から、儒教理論の要点を纒めた『聖教要録』、遺書として、流謫地播磨赤穂で綴った異色の自叙伝『配所残筆』。素行の代表作2篇の文庫版初の全訳注。
目次
聖教要録(聖教要録小序;聖教要録上;聖教要録中;聖教要録下)
配所残筆
感想・レビュー
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大森黃馨
5
古文漢文は分からぬ故に訳文のみを読むがそれで本当に同書を含め古典を本当に理解し得たと言えるのか不安が残る 聖教要録を読み進めていてふと思い浮かぶソクラテス以前の古代ギリシア哲学者の断片これは古代ギリシアの桁違いの先進性の証明かそれとも東洋哲学がその後の西洋思想の段階まで進めなかったと見るべきなのか2023/01/11
衛府蘭宮
1
宋明理学をビシバシ貶していて、かつ己を恃むところ頗る厚い。仁斎などのように体系化するには至らない、古学を先駆けた天才肌なのかなーと思った(小並感)。にしても「俺不器用だからやっと8歳になる頃までに四書五経七書詩文を大方読み覚えたわw」(意訳)って嫌味ったらしいことこの上ない2022/02/07
きさらぎ
1
江戸時代初期の儒学者・兵学者の山鹿素行の語録(門弟が記述)である聖教要録と、流謫中に書いた遺書で自叙伝とも言える配所残筆を一冊にしたもの。全てに原文・訓読文・読み下し文に注釈を載せる。素行の論旨が明快なので非常に読みやすい。編者によると、論は伊藤仁斎に近いが仁斎ほどに体系化は出来ていないらしい。自分の業績を執拗に書き留めようとしたり、武士という階級の強烈な自覚などは、人間関係でノイローゼになった末に人倫へと進んだ、仁斎との気質の違いを何となく感じて興味深かった。2014/07/06