内容説明
科学とは、客観的に実在する外部世界の真理を究めていく学問であるとされてきた。その理論を唯一の真理として現代科学はとめどなく巨大化し、環境破壊などの破滅的状況をもたらした。本書で著者は、これまで科学的真理とされてきた理論を根底から問い直すために、フッサールの認識論やソシュールの言語論を踏まえ、多様性を重んじる構造主義科学論を提唱する。あるべき科学の未来を説く必読の書。
目次
第1章 科学とは何か
第2章 現象と記述
第3章 古代ギリシャの科学
第4章 同一性としての形相と実体―物理学の歴史
第5章 生物学における形式
第6章 科学と社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
minochan
5
科学は現実の事象を扱いたいと思うが、実際には「どこを一つの事象とみなすか」という区切りに恣意性が入り込む。しかも分子や原子といったミクロなレベルになると、それが本当に「ある」のかどうか、実在性自体が怪しくなってくる。そこで発想を転換して、事象そのものよりも「事象と名指されたもの同士の関係構造」を追えば、この問題を回避できる。仮に事象の実在が保証されなくても、コトバ同士の関係ネットワークは記述できる。それが「構造主義科学論」。最近読んだ別の本の「対話型専門知」が生まれる流れと似ているかも。2025/09/21
てぬてぬ
4
構造主義科学論、究極のメタゲームだった。医学については触れられてないが、臨床医学は技術であって科学ではないということがよく分かる(p116)。だから良い悪いじゃなくて、それを自覚しておくことが大事。相対性理論の科学史における意義だけでも読む価値がある。"理論は現象を作っているわけではなく、現象を説明しているだけ"2019/06/02
1.3manen
4
1990年初出。多元主義社会とは、恣意性の権利を最大限尊重する社会(17ページ)。そのノルムは権利侵害しないこと(17ページ)。恣意性とは根拠の無いことらしい。学問は根拠があって理論が提起されるので、多元主義社会は学問的ではないのかもしれない。だが、学問は市民にも必要な人生にとっても不可欠な問題意識、仮説を検証し、一定の結論を導かねば進めない場面もある。人生相談(カウンセリング)で心理学者が相手をしているケースは悩みの解決策を望むクライアントなくして成り立たない。どんな学問が需要があるのか。時代背景も鍵。2013/01/04
YT
2
科学を理解するため或いは楽しむための裏ワザとして、科学を目にみえる現象と背後にある同一性(構造や型式)として記述するゲームであると捉えることが重要だと述べられています。こうした見方を古代ギリシア哲学・物理学・生物学の歴史を追いながらトレーニングしていく。 科学と社会のありうべき未来について論じられた6章では、少し乱暴な議論に思えるが、日本人に馴染みの一元主義は、これからの科学と付き合っていく上で考え直していく点ではあると思いました。2021/08/27
ソーシャ
2
今では評論家として有名な著者が、構造主義科学論を解説した本。結論としては『科学理論とは構造によって現象をコードするものである』というもので非実在論を採用しているのですが、それだと擬似科学などとの区別が難しそうな気がします。まあ、多元主義の立場からすればそれでいいのかもしれませんし、科学理論同士の優劣は別問題かもしれませんけどね。2014/10/18
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