内容説明
幽玄・優艶・有心など、日本的美意識の多くは、変転つねなき動乱のさなかに和歌・能・笛・琴などの「道」に精進を重ねた中世人によって生み出された。風流の極致に我が身を解放することにより、有限の生のなかで永遠を求めんとした「道」の理念を説き、宗紙の連歌と世阿弥の能を楕円の両焦点とした中世文芸の深遠豊饒な世界を明確に論述する。
目次
第1章 中世の曙光(中世的理念;中世への前段階)
第2章 中世の形成(雅の世界;擬古典主義の世界;俗の参加する世界)
第3章 中世の達成(雅の世界の深化;反表現の世界;俗の世界の近世化)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
日向夏(泉)
4
非常に面白かった。著者の「日本文藝史」の前駆となるものらしいが、大著「日本文藝史」を読みたくなった。分かるところも分からないところもあり、頷けないところもあったが、何よりも文章がすばらしい。膨大な知識に裏付けられた的確で含蓄のある言葉選び、語彙の豊富にも関わらず、ひけらかしの全く感じられない誠実さ。この文章を味わうだけでも、読む価値がある。何度も読み返したい。2019/02/05
Haruka Fukuhara
4
ちょっと難しくて流し読みになってしまった。解説の文章を読んでなるほどそういうことかと理解した気になった。いずれ再読できれば。前書きの威勢の良さがかっこよかった。2017/03/09
かさねパパ
3
学生時代に現代新書で読んだ本の再読です。文芸史上の「中世」を前後の繋がり~新しい流れから解説しています。とても理路整然と、そして豊富な資料読解~知識に裏付けられた理論、やや専門用語があり初心者には難しいかもしれませんが、私には心踊らされる内容でした。時代は流れ繋がっているので、新しいものも突然出てくるわけではありませんが、どのような契機でその理念~潮流が出てきたかを教えてくれます。小西先生(と書かせて頂きます)は、同じ大学で教鞭をとられてましたが、その講義を聴いたことはありませんでした~残念です。2015/06/30
しずかな午後
0
「雅(古典・権威・伝統)」と「俗(新奇・反権威・個人)」という二項で、中世の文学史をえがく。王朝の衰退とともに懐古的な「雅」の文学が誕生し、その反動のように「俗」が生まれ、また「雅」が生まれ、と続いていく。神秘化されがちな俊成の「幽玄」を、「歌の背後に潜むものを暗示し、奥行きがあること」と把握するのは面白かった。またそれぞれの時代の作品と、「小説」や六朝詩などの中国文学や、摩訶止観・法語・禅など仏教思想の潮流と結びつけるのが、著者らしく面白かった。2019/07/12




