内容説明
わが国高等教育の頂点に君臨する東京帝国大学の良きライバルとして、明治30年に創設された京都帝国大学。東大の官僚育成のための詰めこみ教育や権威主義を批判して、ドイツの大学をモデルに演習や卒業論文を重視した独自の教育方法を展開した。学生の自由でかつ自主的な学習・研究態度の育成をめざした京大創設期の教育改革の理想と挫折の歴史を考察し、あらためて今日の大学教育のあり方を問う。
目次
第1章 先発大学と後発大学の競争
第2章 明治30年代の大学改革論
第3章 モデルとしてのドイツの大学
第4章 帝国大学の教育システム
第5章 東西両京の大学の競争
第6章 改革の挫折
付論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
無重力蜜柑
14
今でも何かと東京大学と比較されがちな京都大学。それは創設期の明治時代から変わらなかった、というより、後発の帝国大学として京都帝大は東京帝大との違いを積極的にアピールしていた。例えば現代であれば「自由の学風」とか言われるような学生の自主性を育むカリキュラムを採用し、東大の過密な詰め込み教育を批判した。またそれはゼミナールと論文執筆を主軸に研究者を養成するドイツ型大学であり、官僚養成を目的とする東大のフランス型大学と対照的であった。このように日本の大学史の中での黎明期京大の立ち位置を、法学部を中心に検討する。2023/04/25
Se_Quim
2
前半は日本の大学黎明期に、どのような教育システムがとられていたかの概説。後半は筆者の試論。京都帝大は東京帝大のライバルとして期待を背負い設立されたが、それがどのように議論され京大の独自性を確立しようとしたか、京都帝大法科大学草創期の教授高根義人にスポットを当てて、論じていく。筆者もあとがきで触れているが、資料が不足していて決定的な証拠が掴めなかったのが惜しいところ。ただ、非常に面白い内容だったので、法科大学だけでなく、文科大学や理科大学にもスポットを当てた続編を読みたいと思わせる一冊だった。2023/01/02
深窓
1
官吏輩出を主目的に講義中心のカリキュラムの東京帝国大学に対抗して、ドイツ式のゼミナールを中心に置いた創成期の京都帝国大学の挑戦と挫折の話。高い期待を持って開学した京都帝大だが、高等文官試験の合格率を成功の指標とするなら、京都帝大は東京帝大に惨敗した。そして、京大式カリキュラムを主導した教授は退官し、カリキュラムは東大に準じたものに変更された。開学初期の挑戦と挫折は、京大の東大への対抗心の気風に影響しているのではないかと思った。2015/06/24
丰
0
Y-102007/09/12