内容説明
精神医学者として著名なユングはすぐれた思想家でもあった。中心的課題を西洋精神の本質の追究におく彼は手懸りをキリスト教精神史に求め、原始キリスト教の成立過程、グノーシス主義の影響等を深層心理学的見地から再検討し、従来看過されてきた重大な問題点を見出した。ユングの思索を追うことにより、キリスト教における正統信仰確立過程で切り捨てられてきた影の領域の復権を迫る意欲的論考。
目次
序論 ユング心理学と宗教経験の世界
第1章 原始キリスト教
第2章 グノーシス主義
第3章 正統と異端
結び 西洋精神史の光と影
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fishdeleuze
17
精緻に論じられている良書。ユングをフィルターとしてキリスト教を俯瞰する視点と、旧約からキリスト教の正統確立までの時期を3章、すなわち原始キリスト教、グノーシス主義、正統と異端にわけ各々を丁寧に追う視点の2つの流れで論じられている。思想家ユングにおける最大の課題は、ヨーロッパ精神の本質とは何かということである。キリスト教の正統化までの数世紀、幾多の淘汰と断絶があったヨーロッパ精神史に、光と影が混在した西洋精神史を描きたいという考えがユングにはあったのだろう。(続)2013/05/05
中年サラリーマン
10
ユングについての知識が少ないので本書の内容をどれだけ理解できたかどうか。ただ、キリスト教がさまざまな古代宗教を飲み込んできたこともあって光と影の部分がある。ユングは影の部分からアプローチをかけているということは分かった。再読要かな。2014/01/19
いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】
4
**注)心理学**宗教ネタ・SFの読解の為読了。心理分析や自己啓発ではありません。西洋精神の本質追究の末、ユングは原始キリスト教の成立過程やグノーシス主義の影響等を深層心理学的見地から再検討し従来看過されてきた重大な問題点を発見するという内容。SFにおけるキリスト教の元ネタ頻度はハンパではないです。一例をあげると、ダ・ヴィンチ・コードの様にそうと分かりやすい作品からアシモフのアイ・ロボット(われはロボット)の様に少し分かり辛い作品まで多々あります。SFの読解だけでなく、ユングを理解したい方にお勧めします。2012/02/11
wadafumiya
1
ユングを使ってのキリスト教に対する批判的読解。いわゆる異端(グノーシス主義)がいかに魅力的か。2011/11/04