目次
交通について
文体について
場所についての三章
形式化の諸問題
検閲と近代・日本・文学
批評とポスト・モダン
無作為の権力
唐十郎の劇と小説
仏教について―武田泰淳
小島信夫論〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
恋愛爆弾
14
数多の意味のタネ明かしとしての数多の「非-意味」のあり方が「非-意味」のタネ明かしと共に散らばめられていて、いつものように楽しく読みにくいが、「批評とポスト・モダン」にはタネ明かしだけが書かれている。著者の「非-意味」はいつも標的も目的も明確である。明確すぎて、たまにその「自然」な明確さにチャチャを入れたくなったら、その相対主義の病への処方薬として千葉雅也『意味がない無意味』などを読むことにしている。2024/03/31
またの名
13
「日本の閉じられた言説体系のなかでは、どんな多様な散乱や無方向な生成があろうと、根底でそれらは安定的な均衡に到達する。この「自然」がおびやかされないかぎりにおいて、日本の言説体系(空間)は、外部に対して無制限に開かれている」と述べる日本論を目当てに読む。丸山眞男がすべてを飲み込む文化を神道的として論じたのと、大筋では同じ路線の話。欺瞞を暴く思想すらその裏でどれだけ欺瞞に絡め取られているか暴くのを、一流作家から庶民まで誰もが得意とするこの国では、体系的構築へのアンチはアンチの役割を果たせないと苛立ちを記す。2021/08/14
CCC
12
拠りどころとする思想もないのに解体だけして満足してしまう者が多いから日本に思想が積み上がらない、ということに憂いを覚えているように見える話が多かった。愚行でもなんでも拠りどころとなる考えを作ろうとしている者。その挫折や試行錯誤にある緊張から後に残る思想が生まれるのを期待していたのだろうか。2024/05/10
静かな生活
4
良くも悪くもキレキレな80年代柄谷。自分が作家だとしたして、こんな批評に問い詰められたら泣いてしまう。2022/12/25
amanon
4
自分の無知と読みの浅さをさらけ出すようだが、「柄谷は一体何を目指し、何を是とし、非としたのか?」ということをつい考えてしまった。明晰な文体ではあるが、結局何が言いたいのか、よく分からず。それでも何となし刺激的なのでつい読み進めてしまう。こういう物の書き方をする人が、柄谷以降殆ど出てこなかったのは、当然だとも思うけれど、その一方で惜しい気もする。また、後書きでも触れている通り、本書は所謂ニューア・アカが持て囃された時代の評論が収められているということで、今一度柄谷の仕事を包括的に見直す必要性を感じた。2014/09/25