内容説明
二十世紀を代表する理論経済学の巨匠ヒックスが、「市場の勃興」を中心に世界経済史の道筋を理論的に解説。古代地中界世界の都市国家で活躍した商人がその交易活動によって「市場の浸透」の第一局面を開拓。続いて古代ローマにおける貨幣や法の整備、中世イタリアの銀行など信用制度の発達による中期の局面を経て、産業革命期の近代で市場経済が支配的になったとした。現代経済社会の理解に必携の名著。
目次
第1章 理論と歴史
第2章 慣習と指令
第3章 市場の勃興
第4章 都市国家と植民地
第5章 貨幣・法・信用
第6章 国家の財政
第7章 農業の商業化
第8章 労働市場
第9章 産業革命
第10章 結論
付論 リカードの機械論
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- 評価
新学術間接経費本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Z
10
割と良書。マルクスが資本論で資本主義経済の発達過程を描写したよりも包括的に分かりやすく経済の仕組みが発達していく力学を描いていく。農業の誕生から、商業の発達、そして金融、銀行、軍、工業、労働市場と幅広い。これらの発達の理由はリスクヘッジや利益がますからであるが、具体的な歴史も参照しつつ経済のファクターを包括的に扱いなかなか読みごたえのある本だった。2018/12/31
ヒナコ
5
1969年に書かれたヒックスによる経済史の概説書。かなり理論的に古典古代から産業革命までの経済史が記述されており、具体的な事例の解説は乏しい。 慣例や指令によって統制されていた経済が、商人的な取引を主軸にした経済に侵食されていき、最後には産業革命が起こるというストーリーになっているのであるが、新古典派経済学の理論家らしく、権力による収奪や、弱小国への政治的支配が歴史から取り払われ、歴史の発展が経済的合理性からの説明に終始している。→2020/11/12
hurosinki
5
専門的商人が商品を交換する制度としての市場が成長する過程を描く。拡大する市場とその外部のアクターとの関わりがキモ。都市国家(中世には国家)が市場を保護してその成長を促し、逆に市場の成長から生まれた金融制度は国家の力を強めた。発展した市場はそれまで縁遠い存在だった土地や労働をも商品化し、社会は大変動する。近代に市場が科学技術と出会ったとき固定資本の継続的更新が可能となり、その成長は初めて恒久的になったが、一方国家は戦争を通じ行政革命を果たし、市場を強力に統制できるほど成長して市場の自生的な発展に立ちはだかる2020/10/07
Saiid al-Halawi
4
歴史のドライビングフォースとしての経済。著者名前しか知らなかったけどこういう経済史なら大歓迎や。2014/01/18
in medio tutissimus ibis.
2
指令経済の中から市場経済が生まれ、産業革命においてその主客が逆転するまでを、大きく古代、中世、近世にわけて解説する。分業は指令経済のもと産まれただとか、とても刺激的かつ論自体には然程込み入ったことはないのだが、どうも読みにくい。2021/05/09