出版社内容情報
【内容紹介】
人の住む近くにはものやたま(スピリットやデーモン)がひそむ。家や土地につくそれら悪いものを鎮めるために主は客神(まれびと)の力を借りる。客神至れば宴が設えられ、主が謡えば神が舞う。藝能の始まり。著者は、時を遡って日本藝能発生の直の場面に立ち合おうとするかのようだ。表題作「六講」に加えて名編「翁の発生」を収録。著者の提示する「発生学風」の方法こそ近代学問の限界を突破する豊穰なエクリチュール。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
7
「まれびとなるものの実際は、別に何処から来た訳ではありません。やはり、其村人であつたに違ひありません。唯さういふもののやうな形で出て来て、そのやうな手ぶりをするだけです。だからやはり普通の人間です」「南信州の一部分は、私も歩いて来て、此地方にある田楽の、輪郭だけは、思ひ浮かべる事ができます。此は北遠州天竜沿ひの山間にもある事は、早川孝太郎さんの採訪によって知れました。種目が可なり多く具はつて居て、田楽と称する土地の外は「花祭り」と称へてゐて、明らかに田楽の特質の一部を保つています」2017/11/06
GEO(ジオ)
5
読了。再読みたいだが、読んだ記憶が全くない(汗 それはともかく、民俗学の碩学として知られる折口信夫による、「日本芸能史」の講義をもとに、書籍化したもの。 このほかに「翁の発生」など、折口信夫の芸能に関する論考を一緒に収録。 旧仮名遣いで書かれており、多少読みにくいところもあるが、面白い内容だった。民俗学・文化人類学が好きな人は読んでみるといいかも。2016/07/04
tyfk
4
能の翁のことを知りたく『翁の発生』収録の本書を。翁の語り、翁の宣明、もどきの所作、翁のもどき。磯崎新の「始源のもどき」論は、折口信夫の論に依拠したものらしい。 2023/07/23
belier
3
「まれびと」といえば折口信夫だが、折口がその話をしている本を読むのは初めて。というか小説を読んだことあるだけだった。この本は講演録なので平易。テーマは日本の藝能発生について。藝能は祭りから起っているものとし、祭りには遠いところから神さまが出ておいでになる。その神がまれびとだ。藝能の目的は鎮魂ということに出発している。神話の天宇受売命の舞いから田遊び、田楽、能、狂言、踊り念仏、伊勢踊り、盆踊りなどへと話はつながる。これ以外に二つの論がある。「翁の発生」では山姥の起源や沖縄の翁などを紹介し、こちらも面白い。2022/06/19
NагΑ Насy
3
第一講から第三講まで一日ひとつくらいずつ読む。昭和16年の3日間の集中講演の筆記。こんな書き言葉のような話し方なのか、大阪弁だったのか、手をいれて半分文語のような文体になったのかはわからない。慣れてきて後半6講までは、田遊びから派生した田楽、猿楽、能、歌舞伎についての具体的な芸能について話されていたこともあってのめり込むように読み進められた。『ブッダとそのダンマ』を読みはじめて、シッダールタ誕生に関する父の王が催す宴会の構造におなじものがあって、こういうことかとはじめの3講が納得された。2014/01/17