内容説明
今日、生命倫理や医の倫理、環境倫理や技術倫理など、すべての分野で倫理が問い直されている。エコエティカとは、これら一切を含む「人類の生息圏の規模で考える倫理」のことで、高度技術社会の中での人間の生き方を考え直そうとする新しい哲学である。人間のエコロジカルな変化に対応する徳目とは何か。よく生きるとはどういうことか。今こそエコエティカの確立が急務であると説く、注目の書下し。
目次
第1章 エコエティカとは何か―序論的考察
第2章 倫理の復権
第3章 新しい徳目論
第4章 道徳と論理
第5章 人間と自然
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たかまる
3
通信技術や輸送技術、医療技術にとどまらず様々なテクノロジーの集合体が現代を位置付けており、そのような新しい時代では新しい倫理が求められる。それでも人間は決して機械ではなく自然に属する存在であり、「自然とは何か」と考え直すことで生きていく上での手掛かりが得られるのではないか、と問うている。2014/05/10
Tai
2
今道さんが危惧している事は、現時点で更に重みを増して来ている。ビッグデータ、AI、臓器移植、遺伝子治療、原発、ありとあらゆる技術が凄まじい速さで進展している。その上での倫理は益々追いついていない。 人間は自然を越えようと努力する。与えられた環境に不足を感じる。不足は存在欠如、無。現象的無を見つけて充足に向かうのが人間。人間が自然でありつつ超自然につながることに関わるところに罪がある。 エコエティカは益々重みを増していると感じた。2018/07/28
しお
1
序盤が素朴な前提にしたがって進行しているために着地点があまりにつまらないものであるかに思われたが、後半部における(本書では方法が目的に論理的な意味で先立つという言い方をするのだが)「技術連関」が環境を構成し自然に関する判断(自然は環境である)を追いやったという主張は、この思惑を覆す。「技術的抽象」の議論はしばしばマルクスの剰余価値論を引いて論ぜられるところであり、その障害を解消するには資本制を諦める他ないと訴えるのが大概だが、本書は資本制とは別の点で反省することの必要を示唆する。著者の学位論文も読みたい。2020/08/24
ミツキ
0
現代に至るなかで、われわれは“自然と時間が過ぎるに任せる”ことを、忘れてしまったか、惜しいと思うようになってしまったのではないだろうか。今西のいう「技術的抽象」は技術の発達によって経過が省略されて、結果だけがいち早くもたらされる。このとき時間が大幅に短縮されている。時速300キロの速さを覚えてしまうと、時速8キロの徒歩が非常に“もったいなく”感じられることもありえる。私は速さを求めることは“未来を今すぐここへ”と望むことだと考える。速くなればなるほど1秒すら惜しくなる。それは時間の吝嗇と言えよう。2015/02/03
ゐ こんかにぺ
0
実際、倫理学は軽視されつつあるとは思う。ただ、ブラックボックス状態で機械を使ってはいけないとなると、身の回りのほとんどの電気製品は使えなくなる以上、電化製品や情報機器であふれた現在においては適当ではないような気がする。また、原発は国家連合や教会の連合体が運営すべき、というのもなんだか馴染めないように思う。特に、後者。ただし、過去50年、100年ほどの間に急速に電気や機械が身の回りにまで入り込んできて、社会の情報化まで進んでいる、となると、今一度道徳や倫理を再構成する必要はあるのかもしれない。2012/12/31