内容説明
幾多の重要な科学的発見が、必ずしも既成の事実に拠るものではなかったことを検証した著者は、進んでトマス・クーンのパラダイム論の成果の上に立って、科学理論発展の構造の分析を本書で試みた。パラダイムとサブ・パラダイム、サブ・パラダイム同士の緊密な相関関係に着目しながら、科学の縦断的(歴史的)=横断的(構造論的)考察から、科学史と科学哲学の交叉するところに、科学の進むべき新しい道をひらいた画期的な科学論である。
目次
1 科学のなりたち
2 科学と価値
3 現代科学の境位
4 科学技術の前途
5 科学の可能性
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
5
「コペルニクスは…必ずしもすぐれた観測者型の天文学者ではなかった。ガリレオのように、望遠鏡も作らなかったし…ブラーエのような見事な観測技術ももたなかった…コペルニクスの眼前には、直接的所与としてのデータにおいて、地球中心体系から太陽中心体系へと必然的に転換を強制するようなものは何もなかった…しかも、彼は、あえてそれを行ったのである。それを行うに至らしめたのは、データではなかった。その一つはネオ・プラトニズムであり、もう一つはアリストテレス以来のドグマである一様な円環運動という、前提となる枠組みであった」2025/08/19
カラス
4
再読。昔読んだときは難解だなと思ったが、今読み返すとそこそこ読める。易しく感じるということはないし、すらすら読めるというほどでもないけれど、多少は成長したなあと思った。論旨が難解というよりも、見慣れない用語が多く読みにくいという感じ。内容はというと、大ざっぱに言ってしまえば、科学とは一つの思想である、と。ただ他の思想と違い、現実に対する有用性が異常にある。ただ、それはなぜかという点はあまり書かれていないので、このテーマも追求してほしいと思った。2019/12/09
あんさん
2
「反科学」「反技術」「反近代」という言葉が何度も出てくる。村上先生はそれに賛同してはいないが、本書が書かれた当時の、公害や『成長の限界』や、あるいはオイルショックからくる問題意識が感じられる。現在はIT技術が非常に進歩して、人間のコミュニケーションや世界認識が大きく変化している。村上先生はどのように論じられるだろうか。2020/04/28
nobinobi
2
「客観的で、それゆえにまた普遍的であるはずの自然科学が、実はその根元において、(中略)、深く近代西欧文化圏特有の思想構造に支配されている。」自然科学というと、客観的であり人間の主観が入る余地がないものと考えていた。しかし、本書を読むことで、その根元にはしっかりとした人間の考えがあることを知る。現代の重要な判断基準となっている科学について考えるキッカケを与えてくれる一冊であった。2016/04/21
Minoru Yoshimoto
2
前半の「学生実験」あたりまではなるほどと思えておもしろかった。後半はまわりくどい表現が多く,ついていけなくて何が言いたいのかよく分からなかった。2012/06/12