内容説明
西洋の先進文明が怒濤のように我が国に押しよせてきた明治近代黎明期に、当時の知性の代表者のひとり岡倉天心は敢然と東洋の素晴らしさを主張した。有名な「アジアは一つ」の文章から起こし、インドに発する仏教、中国における儒教等に言及しながら、それらの宗教がいかに日本の美術と融合し発展し新たな伝統文化を生成したかを論じる。「我々の歴史の中に我々の新生の泉がある」とする本書は日本文化の本質を再確認させる名著である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
22
日本に集まり、日本の芸術の中に自由な生き生きとした表現を得ているいるものは、 大陸アジアの文化である(12頁)。 アミターバという語は、無量光で、 非人格的神の観念をあらわしている(84頁)。 永徳の後継者で養子の山楽、 探幽の師興以、 浮世絵の父岩佐勝重(169頁)。 円熟し生きた知識、堅固にして温厚な成人の調和した思想感情としての東洋的な 個性の概念が育てられる(205頁)。 2014/03/28
Miyoshi Hirotaka
21
「アジアは一つ」という有名な言葉で始まる。欧米読者向けに原文は英語、度量衡はヤードポンド法、ギリシア古典の引用も多用。飛鳥から明治までわが国とアジアの交流が育んだ宗教、美術、習俗を総括し、アジアの一体感とわが国の独自性を欧米に主張。岡倉天心は幕末生まれ、明治の大変化を青年期に体験。国の寺社調査や欧米視察を経てわが国の芸術の価値をグローバルなそれに勝るとも劣らぬものとして位置付けた。これにより疑似欧風化の流れにあった美術を再国民化へと転換。西洋思想に圧倒されがちだった東洋思想が再生へと歩み出す道を作った。2025/02/14
アミアンの和約
21
明治の知識人、岡倉天心による本。原文は英語だそうだが邦訳版を手に取った。インドや中国、日本の美術に造詣が深い岡倉だけあり、東洋美術史が実にコンパクトにまとめられている。美術品を紹介する時の彼の筆は非常に乗っており、作品を鑑賞した時の興奮がまざまざと伝わってくる。ただ岡倉本人の理想とやらは本書からうかがい知ることはできない。本人がもう少し長生きしていたらきっとわかったかもしれないが。2023/08/07
くらひで
11
日本人の理想、それの下部構造である精神性について、歴史的時系列に従って解明する。中世までは、インド・中国の宗教との影響を受けながら、そしてそれ以降は芸術の面で独自の発展を遂げてきたという。明治維新に入って急激に欧米の文化が日本国内を席巻するが、日本人の粘着的精神によって、その根幹を変えるまでには至らなかった。天心の知識の深さと本質を見抜く洞察力に感服。日本文化と精神性の真の継承者で、保守主義の真髄に触れることができる。2015/05/14
オザマチ
9
日本の歴史・文化史を一味違う視点から見ることを教えてくれた本。とはいえ、インド哲学についての知識が不十分だったので、若干読みづらいと感じる部分もあった。2014/06/27
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