出版社内容情報
【内容紹介】
本書は、生活学の先駆者として生涯を貫いた著者最晩年の貴重な話――「塩の道」「日本人の食べもの」「暮らしの形と美」の3点を収録したもので、日本人の生きる姿を庶民の中に求めて村から村へと歩きつづけた著者の厖大なる見聞と体験が中心となっている。日本文化の基層にあるものは一色でなく、いくつかの系譜を異にするものの複合と重なりであるという独自の史観が随所に読みとれ、宮本民俗学の体系を知る格好の手引書といえよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
142
宮本民俗学とも言われるほど1つの分野にした宮本さん。その晩年に書かれたのがこの本である。塩の道。文字通り海で作られた塩がどのように山の奥まで運ばれたのかを考察している。ここで面白いのは牛の話である。馬ではなく牛で塩を運んでいたのである。牛はどこでも寝れるし道に生えている草を食べてくれる。そこの話を聞いて道草を食うという言葉を思い出した。道草を食うは他のことに時間を費やすという意味である。牛は歩くのが遅くどこでも草を食べるのでもしかしたら語源は牛なのかもしれないと思った!また宮本さんの本を読みたい!2021/11/18
レアル
81
この本は面白い。表題の「塩の道」他、「日本人と食べもの」「暮らしの形と美」の3本仕立て。塩の道も面白かったが、私が興味深かったのは、後の2本。稲作についてとそのルーツ、命をつなぐ為に発達したその土地土地の食文化。そして言葉は悪いが、全てを騎馬民族で解決しようとする歴史を今一度見直している。著者は民俗学者。自分の足で確かめたモノを平易な文章で説明してくれる。良い本に巡り会えた。2015/08/08
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
64
宮本常一は『土佐源氏』一篇しか読んだ事がなかった。本書は表題のものをはじめ『日本人と食べもの』『暮らしの形と美』の3本の講演集なので読み易い。昔の生産業の知らない世界は興味深いが「おや?」と思う事がしばしば。「なかろうか」「思います」「考えられます」等で締め括った想像が多い。今では否定される騎馬民族征服説を基準に話しているのは仕方ないとしても、戦国時代に戦う者と食糧生産者が分かれていたように言うが、兵は農民だった為に武将は農繁期には合戦を避けていたはずだが?。日本人の攻撃性の話も不確かである。2015/10/13
パトラッシュ
57
人は少しでも生活をよくしようと工夫する歴史を重ねてきた。その工夫の有様を、塩の獲得や衣食住の発展した経緯から跡付けている。豆腐を作るためニガリを含む悪い塩を買い、下り酒の空き樽を再利用して江戸で漬物が発達し、草鞋を編む生活が日本人を器用にしたなど机上の学問では決して明らかにされない指摘は膝を打つものばかりだ。晩年の講演をまとめた本だが、それだけに長年の研究成果を注ぎ込んで名もなき庶民が懸命に生きてきた姿を分かりやすく説く。歴史を民衆の努力という視点から見ることを教えてくれる、想像力を刺激してやまない本だ。2020/04/28
マエダ
54
塩というのは大事なものでありながら人々の認識が薄い。理由として塩そのものはエネルギーにならない為とのこと。循環の機能の助け、健康を保全する塩。塩で一冊書けるのは流石。。2023/06/15