内容説明
元暦2年2月、義経は精鋭を率い、暴風をついて屋島を奇襲し、平家を破った。壇の浦に遁れた平家勢と、これを追う源氏勢との最後の合戦が、同年3月24日関門海峡で繰広げられ、海上の激しい戦闘のはてに平家方は敗れ、二位尼に抱かれて安徳帝は入水し、知盛、教経ら武将も壮絶な自害をとげた。宗盛、建礼門院は捕えられて都へ連れ戻され、宗盛は頼朝に面謁ののち斬られ、捕虜となっていた重衡も奈良の大衆に引渡され処刑された。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
57
那須与一のエピソード、壇ノ浦の合戦。後々の兄弟決裂の火種となる義経と梶原景時の先陣争いは、義経の性格が如実に表れた場面で、義経はこんな人物だったのかとちょっと意外な面も。「浪の下にも都のさぶらふぞ」となぐさめられ二位殿とともに入水した幼い安徳天皇の哀れさ。最後まで戦いぬき、敵兵二人を道連れに入水した能登殿の豪胆さ。同じように入水しながらも死にたくないと泳ぎ続けて捕縛される宗盛は、作者から、最初から最後まで冷たい目で見られているような描かれ方だった。2017/09/25
O. M.
4
平家を追い詰める義経、思ったよりマッチョという印象を受けます。まず屋島の戦いの描かれ方が素晴らしい。今まで平家物語で描かれた合戦の中でも一番ではないかな。ドラマや心理描写の配され方が的確なんです。佐々木三郎兵衛の最後のシーンでの大将義経の振舞いや、有名な那須与一のエピソードの絵的な描かれ方など名シーン多し。後半は、壇ノ浦で敗北し、捕虜になった平家の将が次々と処刑されます。宗盛の8歳の子、副将の惨殺。宗盛、清宗親子の最後。奈良に向かう重衡と北の方大納言佐もエピソードなど、哀しさ満載。見どころの多い巻でした。2017/09/10
ターさん
1
平家は壇の浦で最後の合戦に臨む。知盛は逼迫して狼狽える女房達に「めづらしきあづま男をこそご覧ぜられ候はんずらめ」とからからと笑った。「見るべき程の事は見つ」と入水。教経は義経を追いまわす。〈八双飛び〉とは逃げている姿なのか。敵を両脇にして「いざうれ、さらばおのれら死途の山のともせよ」と入水。囚われの身となった宗盛・清宗親子。清宗は〈怯懦な父宗盛の斬刑に際しての態度〉を案じていたが、「目立たうましまし候いつるなり」と聞き安堵して刑に服す。公達にはそれぞれの死に方があった。勝者の義経も義仲同様にやがて悲しい。2025/03/20