出版社内容情報
【内容紹介】
日本霊異記(下)は、中巻の時代の後を受け、奈良時代末期稱徳天皇(764)から平安時代初頭嵯峨天皇(822)にわたる説話を載せる。全39話。凄惨激烈な血族間の政権争奪と権力闘争―その結果として、平城京から長岡京遷都、さらに平安京への再遷―の難世相が説話の隙ににじみ出ている。編者景戒という一人格の、艱難に苦吟した人生の告白が、烈々の句となり、深沈たる文章となって読者を魅きつけるのも(第38話)巻下の特色といえる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
107
下巻は帝姫安倍の天皇・称徳(孝謙)から賀美能の天皇・嵯峨までの時代の説話・訓話を描いている。時代は平安時代中期~末期にあたり、仏法で云う法末・釈迦滅後の末法時代へと移り行く時代である。世は終末思想が蔓延し民衆に厭世観が漂ってくる時代相であった。称徳天皇といえば弓削の道鏡を天皇位に就けようと画策(宇佐八幡宮神託事件)し、『王を奴やっこ(奴婢ぬひ)となしても、奴を王といっても、私の好きにすればよい…… 』と云ったとか―― 2016/08/18
ひさしぶり
19
⚪︎怨を以て怨に報いるは、草をもって火を滅すが如し。慈を以て怨に報いるは水をもて火を滅すが如し。婿に騙され海に沈んた僧が生き延びたが婿の悪行を暴くことなかった。(4)⚪︎邪悪な見解は自分自身を傷つける鋭い剣である。憤怒の心は災をすぐにでも招く鬼である。物惜しみは飢餓の苦を受ける原因となる‥‥(15)⚪︎弥勒菩薩の脇侍ー左大妙声菩薩/無着 右法音輪菩薩/世親 ⚪︎悪い行いしても徳を積もうと願立てるだけで救われる等。 奈良末期から道鏡、長岡京遷都などの世相、景戒個人の告白2023/08/18
内島菫
13
巻末の訳注者解説で、本書と『雨月物語』とを比較して「秋成が現実を夢幻の世界に導き入れて、読者を文芸の世界に遊ばせるのに対し、『日本霊異記』の世界は、冥界を現実界に引き入れて見せる文芸の世界」と述べているのは言い得て妙。続けて訳注者が本書が「冥界をくり広げるのに何の技巧も用いていません」と指摘するのもまた然り。閻魔大王の登場や動物の報恩譚等も多く見られるにもかかわらず、現代の実話怪談よりも直接的で現実と地続きのように扱われている。2024/03/27
七色一味
9
読破。一応上中下巻全てに共通しているのが、いかに仏教が優れているか、そしてその教えを守ることでどれだけのご加護を得ることができるのか、つまりこれだけご利益があるんだから、みなさんも仏教を信じましょう、というのが三巻あわせての共通の主張。しかし、だ。私が読んだ限りでは1編だけ、本当にそうなのか? と思わせる説話がありまして。まぁ、興味が有る方は頑張って探してみてください。死してなお髑髏がお経を唱え続ける、と言った感じの短い説話がありますので。でもこれって、とっても虚しくてやるせない話じゃね?2011/10/28
misui
8
第十八「法花経を写し奉る経師の、邪婬を為して、以て現に悪死の報を得し縁」が、写経の場の美しさを感じさせながらも露骨すぎる濡れ場に移行して面食らう。そして突然の死。抹香臭さから抜きん出たこういう話はやっぱり好きだ。さて次は今昔物語かな。2017/04/04