出版社内容情報
【内容紹介】
本書は、典侍という職掌にあり、また寵妾の1人として親しく堀河天皇に仕えた「讃岐典侍、藤原長子」が、重体から危篤、やがて崩御にいたる天皇の苛酷な現実を、悲傷と追慕の情をひたすらにこめて克明に綴った回想記録である。天皇といえども免れえないいたましい「死」をひとりの女の胸に刻み込んで記した点、他に類例を見ない。テーマも筆致もつつましく地味だが、哀痛迫る平安女流日記の1つとして愛読してほしい文学作品である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさしぶり
6
いかでかく書きとどめけん見る人の涙にむせてせきもらぬに ー素養のない自分には書けん感想。73代堀河天皇が29歳でまさにおかくれになる直前から始まる。下巻 僅か5歳にて即位する鳥羽天皇への出仕の文から。讃岐典侍 藤原長子は堀河院の一周忌も過ぎるのに思い出しては涙する。亡くなる時も傍に寄せてもらえるほど寵愛を受けていたので尚更。9月の一節 幼帝を抱いて襖絵を見せていた折 故帝の楽譜の貼り跡を見つけて袖を顔にあてる…など。 三種の神器の神璽の存外な扱いに驚いた。当時の49日、一周忌法要とも百人の伴僧の法会2019/04/20
内藤銀ねず
5
堀河天皇の典侍(天皇付きの女官ですが、実質は愛人。でも讃岐典侍は恋人というのが合ってるかもしれない)が書いた、宮中の回想録。岩佐美代子さんが「女流日記文学の最高峰」と書いてらした通り、たまんないです。天皇の崩御を死後硬直まで書ききり、また幼き新天皇(鳥羽院)に出仕しながら愛する人のことを思い出したりと、よくぞこんな作品が残っていたと日本女性の凄さを思い知らされました。はっきりとは書いてないけれど、ああこれはセックスした次の朝のことなんだな、とか、授業では習えない部分もぜひとも読み取っていただきたいです。
みるこおら
4
後半、幼い新帝に仕えながら、何を見ても聞いても亡き帝のことを思い出して嘆く姿に、愛する人を失う嘆きは今も昔も同じなんだと、古典の世界が身近に感じられた。2017/09/23
manami
2
まさに亡くなる瞬間のこととか、臨場感がすごい。 三種の神器をあてたらもしかしたら効くかな?みたいなセリフとか、あまり今まで古典でよんだことがないような、生き生きした雰囲気が面白かった。2015/07/31
山がち
0
讃岐典侍日記自体は再読だけれども面白かった。現代語訳がわりと砕けた感じで非常に読みやすかった。もっと言うと、結構きれいで臨場感があったと言ってもいいと思う。注自体は、わりと無難な感じだったような気がして、読みやすく参考になった。章立てはちょっとおおざっぱだったのは残念だったけれども、これはこれで一つの考え方だろう。基本的に会話文が面白かった。砕けた感じが一番よく出ていて、そこは他の現代語訳より好みだと思った。場面としては、やっぱり雪の朝の情景が良かったけれども、堀河院が亡くなってからの人々の様子も好きだ。2013/07/29