出版社内容情報
日本はなぜ太平洋戦争に突入していったのか。為政者はどんな理屈で戦争への道筋をつくり、国民はどんな感覚で参戦を納得し支持したのか。気鋭の学者が日清戦争以降の「戦争の論理」を解明した画期的日本論!
内容説明
日本はなぜ太平洋戦争に突入したのか?明治維新以降の「戦争の論理」を解明した画期的近代日本論。
目次
第1講 「戦争」を学ぶ意味は何か
第2講 軍備拡張論はいかにして受け入れられたか
第3講 日本にとって朝鮮半島はなぜ重要だったか
第4講 利益線論はいかにして誕生したか
第5講 なぜ清は「改革を拒絶する国」とされたのか
第6講 なぜロシアは「文明の敵」とされたのか
第7講 第一次世界大戦が日本に与えた真の衝撃とは何か
第8講 なぜ満州事変は起こされたのか
第9講 なぜ日中・太平洋戦争への拡大したのか
著者等紹介
加藤陽子[カトウヨウコ]
1960年生まれ。89年、東京大学大学院博士課程修了(国史学)。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て、現在は東京大学大学院人文社会系研究科助教授。専攻は日本近代史
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感想・レビュー
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アキ
40
日清戦争から大平洋戦争まで為政者や国民がどのような論理の筋道で戦争を受けとめていったのか、その変遷を追った。日清戦争は、英露にはさまれた朝鮮の独立支援を目的に福沢諭吉が文明と野蛮の戦いと国民に説明。日露戦争は吉野作造が門戸開放を行わない文明の敵ロシアへの戒めとその国の国民を解放するという天授の使命とした。意外だったのは人種差別撤廃を国際連盟に提出した日本とそれを内政干渉だと反発した米国の構図。その時代ならではの事情。未来に生かせるかはわからないが、戦争の歴史を振り返りその時代の必然性を想像することは重要。2018/12/15
A.T
34
1894年 日清戦争 1904年 日露戦争 1914年 第一次世界大戦 1931年 満州事変 1941年 太平洋戦争 この時代が戦争に戦争をつぐ時代であった事実の重みを振り返る。だから戦争にうったえなければならない、だから戦争をしていいのだ、という感覚になる不思議。なぜ軍事費を出し惜しみしてはならないのか、なぜ清国を敵にするのか、なぜロシアと戦わなければならないのか、なぜ中国と長い戦争を戦わなければならないか、への答えが当時急速に形成され準備されていった経緯を知ることは、きっと未来の標べになるだろう。2019/01/06
禿童子
33
西郷の征韓論から日清・日露戦争、第一次大戦、満州事変、日中戦争から日米開戦まで、新書一冊で講じるのはそれだけでも見事。加藤先生はその時代の政策決定に関わった要人、例えば山縣有朋の思考の淵源をシュタインに求める。あるいは、吉野作造などデモクラシーの主唱者の戦争論を取り上げる。世論を形成する人々の思惑・事情を加味して日本がたどった道筋を復元してみせる。『それでも日本人は「戦争」を選んだ』と好一対を成す日本近現代のポートレートを描き出した洞察に満ちた好著と言える。戦前の日本を知りたい人にオススメの本。2024/10/07
007 kazu
33
明治以降の日本が経験した戦争の論理とは?外交に止まらず世論の側面も含め世界情勢と合わせて解説する。今の視点で見れば荒唐無稽に思える箇所があるのも当然だが、複雑な変数と多くの前提の中でもがく為政者や当時の国民達の考えに思いを馳せる。日本からの人種差別撤廃条項の申し入れが米国の国連加盟に大きな影響があった点など興味深かった。新書と思って安易に考えたが高度にアカデミックでそれ相応の覚悟がないと消化しきれず大いに時間がかかった。しかし、東大の講義をこの価格で受けたと思えば満足度も違うか。 2021/03/28
ぴー
32
非常に面白い本。本書はどのような理由、理論で戦争をするのかという『問い』をテーマに近現代史を紐解いていく内容だった。特に、満州事変から太平洋戦争へ至るまでの説明が鮮やかすぎた。ただ単に歴史的な事象を列挙するのではなく、様々な視点で見ることや柔軟な考え方が大切なんだと実感した。加藤氏の視点の鋭さと柔軟性にはびっくりしました。2024/09/09