内容説明
ユダヤ人はなぜ放浪の民となったのか。ホロコーストにまで至る民族の悲劇的な運命を決定づけたローマ皇帝と古代キリスト教会指導者達の意図とは。
目次
第1章 前史―ユダヤ民族と古代社会
第2章 ローマ帝国への追従と抵抗
第3章 初代教会の発展とユダヤ人
第4章 古代末期ローマ帝国の対ユダヤ人政策
第5章 古代における反ユダヤ思想の形成
著者等紹介
大沢武男[オオサワタケオ]
1942年埼玉生まれ。1965年上智大学文学部史学科卒。1980年ヴュルツブルク大学博士号取得。現在、フランクフルト日本人国際学校理事
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感想・レビュー
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Nat
35
図書館本。ユダヤ人が差別される理由を紀元前まで遡り考察している。カエサルがユダヤ人を優遇したことや、ヘロデ王の政策など新たに知ることができた。ローマ帝国は宗教に寛容な国だったが、キリスト教が国教になるにつれて、ユダヤ人が差別される状況が増えていったようだ。ただしキリスト教発展のためには、生かさず殺さずという方針が貫かれていく。コンスタンティヌス帝はローマ帝国を維持するためにキリスト教をパートナーに選択したが、その選択はその後のヨーロッパとユダヤ人に大きな影響を与えていくことになったようだ。2021/06/13
ジュンジュン
8
反ユダヤ主義の源流を求めて、古代ローマ帝国と初期キリスト教会との関係を辿る。ユダヤ教の不幸の原因は、派生したキリスト教が世界宗教になってしまった事だろう。強烈な近親憎悪。例えるなら、ほか弁とほっともっとみたいなものかな…違うか。2024/09/01
いくら丼
5
えっと……「すでに述べてきた」系の言葉、多すぎん? 時系列があまりにも言ったり来たりで、元々断片的な知識が余計バラバラになって混乱する気すらした。一応整理しながら読んだから、少しは纏まった知識にはなったものの……章ごとにテーマが違うというなら、もっとぱっきり分けてほしいし、何回も似た話をされるのもなあ。すでにと言われてもバラバラ過ぎて、「えっ、どこだっけ」とかなるし。著者ともあまり気が合う気もしないし、なんだかな……この文字数要る? とはいえ、一応ユダヤとローマの歴史は多少わかったし、読んだ甲斐はあった。2022/09/28
脳疣沼
4
ナチスのユダヤ人大虐殺は有名だが、そこに至るまでの歴史を紐解くと、なんとまあゾッとするような歴史の転換期があったのである。ユダヤ人とローマ帝国、そしてキリスト教の歴史を通して、ユダヤ人が如何に悪者にされていったかが明かされるが、(語弊があるが)スリリングで面白かった。イスラエルは戦争ばかりしているので、一概には言えないが、それでも今の時代はユダヤ人にとって、もっとも素晴らしい時代の一つなのではないか。とは言っても、アメリカをかつてのローマ帝国に重ねると、一見安泰であっても、なかなか楽観的ではいられない。2014/05/25
柳絮
3
ナチスによるユダヤ人への大迫害は民族主義によってなされたものではなくキリスト主義によってなされたものであった。ユダヤ人はローマ以前の時代から、文化に馴染まず、法に従わず、君主を仰がず、与えられれば求め続ける、どこの国でも永遠の移民者であり続けた。その厄介さは、古代から既に現在の移民問題と似ている。しかし、それは対立や弾圧とそれに対する暴動程度しかもたらさなかったはずであった、それを殲滅するまでの情熱を与えたのはキリスト殺しの復讐としてのイデオロギーであった。と言ったことを書いた興味深い一書。2012/10/24