出版社内容情報
関東軍はなぜ暴走したか――関東軍は、なぜ1930年代の初頭に満州事変をひきおこしたのでしょうか。もともとそうした侵略性をそなえていたのだといった類いの解説は、歴史上のあらゆることの説明に転用しうる便利さをもってはいるものの、運命論者以外の人の説得には役だちません。また、組織的な軍隊が中央の命令もないまま行動するには、少なくとも現場の指揮官に、十分な動機と高いレヴェルの決意が必要なはずです。あらためて述べるまでもないことですが、日本の戦争がもたらした惨禍を考えれば、到底、関東軍の行動を高らかに称賛したり全面的に正当化したりすることはできません。ただ、実は正直なところ、自分が現場にいたら指揮官の決断に同意したのではないか、あるいはひょっとすると似たようなことを指向したのではないか、と感じているのです。――本書より
内容説明
正しい歴史観をみがくための九つの「なぜ?」。
目次
日本はなぜ植民地にならなかったか
武士はなぜみずからの特権を放棄したか
明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか
戦前の政党はなぜ急成長し転落したか
日本はなぜワシントン体制をうけいれたか
井上財政はなぜ「失敗」したか
関東軍はなぜ暴走したか
天皇はなぜ戦犯にならなかったか
高度経済成長はなぜ持続したか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
55
三〇年代も、浜口雄幸内閣から第二次近衛文麿内閣まで…この一二年間に乱立した内閣は全部でちょうど一二、平均組閣期間は一年にすぎない/近代を生みだしたヨーロッパの放つ魅力は、なお強烈…ここで新たな実験が続々はじまった…しかも、そうした実験はことごとく成功しているかのようにみえて…一九三〇年代は、一党独裁と計画経済こそが人類の到達すべき理想の姿だ、という感覚が世界をおおった一時期/9つの設問とその答えという設定で読みやすいです。たただ軽視されてる事もあると読みました。(満州事変がらみで一夕会は鍵の一つでは?)2022/03/26
非日常口
17
歴史とはその国が見せたい物語であり、他国もまた別の物語を描く。たまに相手国の新聞社の捏造記事に便乗し国交を悪化させ、ネタ元の捏造新聞も間違いをシラバックレル。清は様々な国家の植民地になったが、日本はならなかった。明治維新は本来被支配側がするはずの革命が支配層の武士によって行われた。天皇大権と宮中・府中の別から天皇が戦犯にならなかった考察、第日本帝国憲法の問題点、民族自決が発表やワシントン会議をのんだ日本側のメリット、戦争景気の後退から不況⇒昭和恐慌⇒ブロック経済の問題。改めて考えるべき現代史のヒント例。2014/09/08
珈琲好き
7
素朴な問いから歴史を遡っていくという形式は良いのだが、分かりやす過ぎ、筋が通り過ぎてて面白味が脱臭されてるような。知恵のスナック菓子のようなイメージ。2015/09/06
おせきはん
6
日本はなぜ植民地にならなかったのか、から始まり、明治時代以降の歴史の気になる9つの「なぜ?」について、ポイントを絞ってコンパクトに解説しています。武士はなぜみずからの特権を放棄したか、は考えたことがありませんでした。2016/06/29
void
6
【★★★★☆】'98年。文字大きいしさくっと読める。俯瞰した理屈が通っている。日本が植民地にならなかった理由(自立していてくれた方が手間をかけずロシアの歯止めにもなる…)、明治憲法下の内閣が短命な理由(首相の権限の弱さと閣内不一致の怖さ、権力分散状況…)、天皇が戦犯にならなかった理由(統治に便利、むしろ処分によって反乱が永続化するような気配…)など、九つのテーマの「なぜ」を求める本。2014/08/03