内容説明
目隠しされた女性像、黒い聖母、悪魔、葉人間―大聖堂の奇怪な図像はなぜ生まれたのか。もう一つのキリスト教美術を鮮やかに解読する。
目次
1 悪魔の出現とその形態
2 ロマネスク美術と『黙示録』
3 右と左の序列―左は悪い方向
4 謎の黒い聖母像
5 『旧約聖書』伝壁画のなかの横顔像
6 目隠しされた女性像―シナゴーガ表現
7 「葉人間」の正体
8 怪物ガルグイユの象徴的意味
9 一角獣のタピスリーの意味
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
45
20年以上前の論説、殆ど基礎知識がない知識だけにフムフム読み。サブタイトルまんまの筆者独自的蘊蓄。西洋中世美術は教会建築そのものに付随している為に日本でなまに見るべくもない、様式だけが美術史の対象となっている。まぁ、キリスト教からすると異形であり、謎解きは未知の面白さてんこ盛り。根っこにドリュイド教のアニミズム、シナゴーグとエクレシア(ユダヤ教とキリスト教)を引き合いに出し、解説するが些か強引。スぺインの聖地巡礼やら時々話があちこちに飛び、少し散漫かな。葉人間、ガルグイユ(ノートルダムの怪物)の話が印象的2017/03/26
kasim
27
黒い聖母について知りたくて手に取ったが、悪魔、グリーンマン、ガーゴイルなど中世の異形の表現について章ごとに異なるモチーフを扱っている。肝心の黒い聖母に関しては、著者はケルト文化の影響を重視しているようだが短いこともあり少し食い足りない。その代り、他に面白い章がいくつもあり、特にクリュニー美術館の貴婦人と一角獣のタペスリーの分析は、意志が五感を操ることと放棄することのどちらが主題なのかという従来の議論に加え著者自身の斬新な解釈を示してスリリング。分かり易く上質なイコノグラフィー本。2020/01/12
じーーーな
2
目次に偽りなし。黒い聖母に限らず、キリスト教会にみられる幾つかの異教的な図像を端的に解説した本。 ただやっぱり、「何々信仰の名残り」という説明では片手落ちに感じる。その「異教」の要素が駆逐されずに変質していった背景を論じるものではない。所々に筆者の見解が取って付けたように割り込んでくるのも、構成としてちょっと中途半端だな……。2011/12/24
(ま)
1
ロマネスク時代のゴールに現れた異教的異質・異様な表象の解釈 詰め込みすぎのよう...2023/01/28
nekonon
1
メインタイトルがちょっとオカルトチックだけど、中身はいろんな教会の壁画や建築装飾、などのお話。ちょうど今来てる貴婦人と一角獣のタペストリーの話なんかも入ってて、展覧会を観に行く前に少しだけ前知識がついてよかったかも。図像学楽しそう。 私みたいにまったく知識がない状態でいろいろつまみ食いする分には楽しい本だったけど、一つ一つの項目がややざっと取り上げられている印象があるかな?興味のある項目は、別な本で補完するといいのかもしれません。ドリュイド教のこととか、ケルト神話の怪物のこととか。2013/08/22