内容説明
作家がいる、貴族がいる。労働者、商人がいる。傾けたグラスから、政治が経済が、文化が生まれていく。全土にひしめいた民衆社交場から大英帝国の400年を読む。
目次
第1章 パブとイギリス人
第2章 パブの起源
第3章 パブで出す酒
第4章 パブの多彩な機能
第5章 激動する時代の中で
第6章 巨大パブの誕生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
6
中世から17世紀にかけて、大英帝国の社交場として、人と物とが集まるパブ。人々はそこでビールやエールを飲み、食事をとり、時には宿泊もする。闘鶏やオークション、演劇やボクシング、クリケット、巡回裁判、職業斡旋、選挙運動も行われていたという。交通網の発達に従って、かつてのインはステーション・ホテルへ、食事はレストランやカフェへ、娯楽はコンサート・ホールや美術館へ、商売は王立取引所へと、時代が降るにつれてその機能は細分化していく。前半は時代遅れの与太話が多く、内容も薄いが、後半に進むにつれて面白くなっていく。2023/01/23
misui
6
宿泊施設、娯楽場、劇場、駅、市場、集会場など、パブ(パブリック・ハウス)は教会に次ぐ大きな建物であったために公共の場として様々な機能を担ってきたが、時代が下ると居酒屋へと収縮していったという。インと交通についてはもう少し詳しく知りたい。あとシモの話も当然あるんだろうけどあまり触れられてないかな。新書らしい軽めの一冊。2020/07/31
ネムル
4
多様な用途を兼ね備えてきたパブが産業革命をきっかけに、現在の酒場へと性格を変えていくまで。中世の酒場であり、宿屋であり、職業斡旋所でもありということで、どうしたってルイーダの酒場を思い浮かべてしまう。2013/12/17
Ernest
1
パブは酒場で、宿屋、社交場、劇場、レジャーランド、職探しの場…と一つでなんでも兼ねていたというのにびっくり。チョーサーやディケンズなどの文学作品に出てくるパブや、その他の文献を紹介しながらパブってどんなものか探っていく。ある映画を観てからパブに行きたくてしょうないのだけれど、パブにこんな物語があるとは知らなかった。中には眉をひそめてしまうような飲み方だったり、動物いじめの見世物の話もあったけれど、全体として楽しかった。2013/01/09
くにお
1
イギリス人にとってはなくてはならない心のふるさと「パブ」の機能やその歴史の解説書。時代時代の文学作品や日記などを引用しながら生き生きとしたパブと人々の関わりを『コーヒーハウス』の著者小林章夫が紹介してくれる。宿として、劇場として、酒場として、労働運動の起点として、歴史の中で様々な機能を担ってきたパブは真の意味で英国的な文化であり、グローバリズムの進展の中にあってもおそらくこれからも存在し続けるはずである。読後、なんだかビールが飲みたくなる。2011/09/06