内容説明
天下人信長は、天皇を超えようとしたのか。中世的権威を否定することによって統一事業を成功させた信長の前にある正親町天皇という障害。将軍義昭追放の後の政権構想を考察し、天皇制存続の謎と天皇の権威とは何かという問題に迫る。
目次
序章 上洛志向
第1章 入京直後の公武関係
第3章 勅命講和
第3章 天皇の平和
第4章 神格化の挫折
終章 本能寺の変なかりせば
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
20
畏れ多い話なのだが、なぜ絶対権力者と思える信長が天皇家を抹殺ないし排除しなかったのか疑問である。その疑問を考えると、日本国にとって天皇制とはなんぞやという本質的問題に突き当たる。この新書では、はっきりと書いているわけではないのだが、疑問解決に向けたヒントはある。石山本願寺との戦いのように、四方八方の周囲を敵に囲まれていた信長にとって、天皇を抱え込んでおくことで勅命講和という切り札をもつことになる。そしてその政権の正統性と永続性は天皇による将軍任命によって保障されるのである。日本の絶対権力は天皇家といえる。2015/07/01
in medio tutissimus ibis.
2
信長を中世的権威に絶対挑むマンとして描いているが、それは後世の人間が結果と己の憶断からそうみるだけで、勤皇家説と選ぶところがない。そんな大望に振り回させるより、当時の人間としてその時の最善を尽くしただけと考える方がより面白くなっただろう。著者にはその実力があったと思う。例えば、管見にはいまいち腑に落ちていなかった延暦寺焼き討ちについて、山門領横領問題の確執や浅井朝倉軍への加担、袞竜の袖に縋っての薄氷の江濃越一和という背景を詳述されてみれば、信長には悪名となろうとも圧倒的な勝利が必要だったことは察せられた。2024/04/14
凡栽
1
あの覇王信長は実は意外に中世人らしい中世人だった。ピンチになると天皇の綸旨で休戦協定を結ぶ。将軍になりたかった。昔は官位嫌いだったけど、上洛後は官位もある程度認めるなど。信長が正親町天皇に誑かされ続ける姿は今までの信長像を変えるものになるか。2011/10/20
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