内容説明
全世界から巨富を集め、繁栄の限りをつくしたローマ帝国。食卓をにぎわす珍鳥・珍魚、文学に、スポーツに進出する「自由な女」、文化となった愛欲―。「永遠」をうたわれた巨大文明の興亡の中に現代の超大国・日本の姿を透し見る。
目次
序 「ローマはなぜ滅んだか」となぜ問うのか
1 ローマ帝国の繁栄とは何か
2 道路網の整備
3 ローマ帝国の経済構造
4 経済大国ローマの実体
5 爛熟した文明の経済的基礎
6 悪徳・不正・浪費・奢侈・美食
7 性解放・女性解放・知性と教養と文化
8 ローマ帝国の衰退とは何か
9 第三世界(「周辺」)への評価の岐れ道
10 ローマはなぜ滅んだか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蘭奢待
38
ローマ帝国から神聖ローマ帝国、オスマン帝国の宗教と文化の伝承が知りたい。そう思って手に取ったが、内容は期待とは全く異なった。ローマ帝国は共和制を含めて長い歴史、成熟した文化を持っていた。道路事業しかり、水道事業しかり、税制しかり。しかし、文明の行く末は爛熟の末の退廃だった。奢侈に溺れた上流階級。見るも散々たる生活を送っていたようだ。 本書は種々の記録から実にロジカルに当時の生活を解き明かす。日本は弥生時代。それができるだけの当時の記録や史跡が残っていることに驚く。2019/02/02
kawa
36
「ローマ人は地中海世界の人びとを殺戮し、破壊し、収奪し、情欲の対象とし (中略) 収奪の巨大な果実は、彼らの中の一握りの支配層の手に入り、彼らの貪欲、奢侈、美食、不正、悪徳を無限に可能しらしめた。」と、多くの資料に基づき苦言を呈する。塩野七生女史の温か目線と異なる学者らしい冷徹な分析が印象的。第1刷1989年10月刊、2013年12月第41刷を読了。2024/09/22
Miyoshi Hirotaka
33
ローマはアルプス山脈で蓋をされた島のようなもの。ここを越えられたのは名将ハンニバルだけ。海上の敵カルタゴに替わり地中海を支配した。海路はローマに繁栄をもたらした。一方、「ローマは一日にして成らず」、「すべての道はローマに通ず」の諺通り、長年かかって道路を建設した。陸路で内陸に収奪圏を広げたが、陸と海では輸送コストが桁違い。道路網は帝国を疲弊させる方向に作用した。さらに、異民族や宗教が陸路で流入。生産的な仕事は奴隷に丸投げされ、ローマ市民は何もしなくなり、富の再配分は機能停止。格差が広がり、帝国は滅んだ。2021/10/26
崩紫サロメ
30
20年ぶりくらいに再読。1989年刊。当時は高校生だったのであまり考えて読んでいなかったが、80年代に近代史で盛んになっていた従属理論(ウィリアムズ、アミン、ウォーラーステイン等)を古代史研究に適用していくことを紹介した入門書としてはかなり早いものではないか、といった点から感慨深く感じた。また刊行前年にギボンの『ローマ帝国衰亡史』が日本で1万数千セットも売れたということにも時代を感じる。2020/08/04
佐島楓
26
世界史に疎いため、ピンとこない文章がほとんどで、自分の勉強不足を痛感した。ローマ帝国時代においても「昔はよかった」と書き残している人がいるというのはちょっと可笑しかった。この感覚はいつの時代も変わらないんだな。2013/09/17