出版社内容情報
【内容紹介】
自分の知的領域にふれあう本を一冊一冊精選して、個性あふれるライブラリーを作りあげ、学問を生活化することが、知的生活のポイントである。そのために不可欠なゆとりある生活への道を探り、就職・結婚のプラスとマイナス、図書館の《接近利用法》、機械的な作業の有効性、フランクリン式文章上達法など毎日の生活を充実させるためのオリジナルな方法を公開する。大きな共感をもって迎えられた前著に続く本書は、日常のくりかえしのうちに、ともすれば流されがちな現代人にとって、ゆるぎないライフ・スタイルを身につけるための恰好のガイド・ブックである。
農耕的作業――構想が構想であるうちは論文でもなんでもない。いちおうの構想やら書いてみたいことが浮かんだら、書きはじめてみなければ何もわからない。疑問が生じたらチェックし、最初正しいと思ったことが間違いだったら書き直す、というふうにして、毎日、何時間か機械的に取り組み、何ヵ月、あるいは1、2年かかるということを覚悟しなければ、まともな論文はできない。最初になにほどかのアイデアがあり、それを具体的な知性生産に結びつけるためには、衝動的な作業では駄目で、機械的・継続的な、ほとんど農耕的といってもよい作業が毎日続く。――本書より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
94
わからないのにわかったふりをしない”知的正直”は確かに難しい。ぞくぞくするくらい面白いと感じるくらい理解できねばそれは理解したとは言いがたく一冊を繰り返し読むよう書いていた。参考になる。2017/09/18
gtn
37
「知的に生きるとは、何かを成しとげることというよりは、むしろ一種の精神状態である」とのハマトンの言葉を引き、特定のイデオロギーの信奉よりもスタイルに重きを置く著者。しかし、知的好奇心を分かち合う友がいてこそ、その生活が完成すると述べており、世間との遮断を前提とした頭でっかちな生き方ではないことを確認し、ほっとする。2020/06/04
かわうそ
24
偉大な哲学者たちは手に取れる範囲に本を持っていた。つまり優れた書斎があたったのである。ヒュームの例で示されたように本の内容よりも様式、書き方によって売れ方が変わるのだ。もちろん、ヒュームに関してはわかりやすく書いたからといって内容の水準が落ちたわけでもないと思われる。優れた能動的な知的生活を送るためには書斎を持ち、分かりやすく書くことを意識すべきでさらには偉大な著作家たちは必ず大量の作品を残してきた。それにはとりあえず書く、仕事に取り掛かるべきであるというヒルティの教えに繋がるのだ。2022/09/26
柳田
23
前著と同様、妙に記述が具体的で面白いし、有意義。論文はとにかく書き始めろ、とか。古典的というか、素朴な教養主義を説いているようではあるのだが、大学にいて、こういう昔の人と今の人とで違うと感じるのはまずその読書量、勉強量である。名の知れた人の読書論とか自伝とかを読むと昔の人はどれだけ勉強していたかと大学2年頃からものを読み始めた自分を恥じたし、大いに学習意欲を喚起されるのだが、周りをみれば、そういう負い目を抱えているようにみえる人は見当たらない。研究大学の人文系の院生とか、こういうの読んだらどうか。2018/03/24
イロハニ
21
79年刊。自分で自分のライブラリーを作りあげていく事で個々人がそのライフスタイルを確立させる。がそれには自国に言論統制が無き事…そうした生活の為の若干の経済的自立は必要な事…本書刊行時、我が国にはその環境が有りその気運も見て取れた。がその後気運の隆盛は無い…それは日本人がその気運気概を放擲した為か?社会環境の推移もあろうし当時すでに英国さえ知的衰亡の現実があった。今『自分のライブラリーを作る』…これを個々人が目指す事は混迷する現状を脱却して目指すべき継続的な安寧安定の今後の進路の鍵となるか?道は険しいが。2023/02/02