出版社内容情報
【内容紹介】
ブラジルへ渡航寸前、ふとした口論から1人の男を刺殺してしまった混血児・岡田サチオ。夜の新宿を逃げまわる彼に救いの手を伸べてきた4人の若者がいた。週刊誌記者、学生、歌手志望の男、ゴーゴーガール。彼等はサチオの渡航を助けようとするが真意は何なのか。息詰まる迫力で展開されるサスペンス劇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
205
西村京太郎さんの第9作。本書は黒人との混血児青年サチオが日本を捨ててブラジルへと船で渡航しようとする前夜に酔漢との喧嘩で相手を刺殺してしまい警察に追われ絶体絶命の危機に陥った所を日本の若者たちが救おうとする話なのですが、ヒューマニズムからの行為というよりも冒険好きのゲーム感覚や過激派グループが自分達の目的に利用する為の行動という意味合いが強いサスペンス小説でありミステリーとしての謎解きの要素は薄目ですね。今回は翌日の朝10時に客船が出発する設定に向けたタイムリミット・サスペンスの趣向が強烈に味わえますよ。2023/11/30
夢追人009
125
西村京太郎氏の9冊目の著作となる緊迫のタイムリミット・サスペンス・ミステリーの傑作です。本書は漢字二文字だけのとてもシンプルな題名なのですが中々に巧く考え抜かれた意外性に満ちたミステリーの仕掛けと手に汗握るタイムリミット・サスペンスの興奮の両面が目一杯味わえる稀に見る著者渾身の力作だと思いますね。それから本書巻末の解説に記された山村美沙さんとの対談の内容が充実していてとても面白かったです。乱歩賞受賞作「天使の傷痕」の原題が「事件の核心」だったという話題など盛沢山ですのでこちらも読まれる事をお勧めしますね。2018/04/30
オーウェン
56
ブラジル日系人の岡田サチオが渡航する前に、傷害事件を起こして警察に追われる身に。 4人の男女が結託して、何とかサチオを渡航させようとする。 1人はともかく、残りの3人は無関係であり、更に増える協力者。 助けようとする真意は何か。 また途中で殺人事件も発生する。 やけに怪しい行動をする人物がいたが、それが最後に目的が発覚する。 若者の叫びなど、政府や社会への反発も目立つ社会派としての側面もあり。2024/03/25
浅木原
6
ブラジルへの渡航直前、誤って人を殺してしまった混血児の青年に、4人の若者が手を差し伸べる。『四つの終止符』のような日本人の優しさで糊塗された差別意識と、『ある朝 海に』同様の学生運動時代の若者のプロテストを描いたタイムリミットサスペンスの快作。サチオの抱える息苦しさ、それぞれの思惑を抱える協力者たち。出港時間へ向けた12時間の中で二転三転する展開にあれよあれよと読まされる。ツッコミどころはあるけど、今現在も変わらない問題意識とサービス満点のプロットが面白さを支える、初期西村の美点に満ちた傑作。面白かった。2015/08/06
二分五厘
1
1984.10.11
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- 電子書籍
- インパクト 5