出版社内容情報
【内容紹介】
瓦解目前の徳川将軍家に降嫁を命ぜられた皇妹和宮の身替りとなって、歴史の波の赴くままに運命を弄ばれた少女フキの数奇な一生と、その策謀の陰で、時代への抗いを貫き通した女たちの、苦悩にみちた境涯。無力であった者への鎮魂の思いをこめて描き上げた有吉文学渾身の長編歴史小説。毎日芸術賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小梅
107
和宮が替え玉だった…地位の高いお方は顔を間近でジロジロ見られる事がほとんどなかったわけだから、人が入れ替わるって可能かもなと思わせる。公家言葉が読みにくく感じるが、読み進めてるうちに慣れてきました。健康的だったフキが、気付けば宮様と同じように白くて細くなっていき、心が壊れていく様が痛々しかった。個人的には昔の位の高い人の、トイレや生理事情が興味深かったです。2018/06/01
♪みどりpiyopiyo♪
47
歴史の異説。それぞれの「和宮」が哀しい。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
42
幕末、宮家から徳川家に嫁いだ和宮は、別の人が入れ替わっていた。ずっと前に大竹しのぶのドラマの記憶があり、その時は「なぜこの人はお嫁に行くのが嫌なのだろう」とすっきりしなかったが、歌川国芳の風刺画が一枚絡んでいた、という設定。なるほどなるほど。解説で何故有吉佐和子氏がこの作品を思いついたかを知ると、これも本当の話かもしれない。維新後の大奥の女達の寂しく悲惨なその後も、興味深く読んだ。2015/09/16
酔拳
40
幕末の公家の事をよく知らなかったので、本書を読んで、公家の生活を少し知れてよかった。公家の口癖が「貧福 貧福(ヒンプク ヒンプク )」であったことは、興味深かった。 和宮様が東下されることになり、替え玉を用意し、その替え玉も使い物にならなくなったら、違う替え玉を用意し、和宮様を東下させた・・・・と、もし本当だったら、怖い話である。公家言葉が難しく、読みづらい小説ではあった・・・が、和宮様や公家の事を少しでも知ることができてよかった。2017/10/11
Haru
37
初・有吉さん。関東に行くのは「お嫌さん」な和宮の為に、母・勧行院は兄・橋本中納言実麗の家の下働きフキを替え玉にする。水汲みが大好きで生き生きとしていたフキが御所の中で物のように扱われ生気をなくしていく姿が痛ましい。和宮というただ一人の為に周囲でおこる狂乱がなんとも馬鹿馬鹿しく哀しい。またフキが心から頼っていた少進の心の在りようも、本人が悪い人間でないだけに余計うすら寒く感じる。今まで読んだ幕末物ではほとんど触れられていなかった和宮降嫁。いまもあまり変わらぬ女の世界も含めて当時の公家社会の内情が垣間見えた。2014/05/16