出版社内容情報
【内容紹介】
暗黒の時代といわれる中世は、家内制手工業の発展、自然科学の隆盛、キリスト教美術の開花など、古典時代の遺産を近世のダイナミズムに向けて静かにはぐくんだ時代でもあった。本書は、中世を特徴づける封建制の総合的分析を軸に、法王と各国王の確執、十字軍の旗印と実際、イスラム学者の偉大な業績などにもふれた、中世再発見の書である。
十字軍と騎士階級――十字軍は中世人の深い信仰心とこれを指導するローマ法王の力によって実現した。しかしそれはまた、中世封建社会と切り離しては考えられない。十字軍に加わった人々は、王侯から農民、乞食などあらゆる階層をふくみ、男子だけでなく女子も同行した。しかし十字軍兵士の中心は、封建社会を代表する騎士であった。冒険と戦闘を好む騎士にとり、十字軍はまたとない舞台を提供したのであり、聖地回復の旗印は、騎士の武力を聖化したともいえよう。――本書より