内容説明
現代日本の幻想・怪奇・伝奇文学の至宝を、作家ごとに集成する注目の新シリーズ、ここに開幕!青春の光と陰をミステリアスに描いた、幻の長編オカルト・ラヴロマンス「上空の城」、泉鏡花文学賞を受賞した蠱惑の長編エッセイ「海峡」、そして「花曝れ首」「阿修羅花伝」「平家の桜」ほかの傑作短編11編に充実の著者インタビューと、絢爛たる赤江美学の精髄を一巻に集大成。単行本3冊分の内容が1冊に。
著者等紹介
赤江瀑[アカエバク]
1933年、山口県下関市生まれ。日本大学芸術学部演劇科に在学中より、詩作、脚本などを手がけ、以後、シナリオライターとして執筆活動を続ける。70年、「ニジンスキーの手」で第15回小説現代新人賞を受賞し文壇にデビュー。84年、『海峡』と『八雲が殺した』で第12回泉鏡花文学賞を受賞。他に、山口県芸術文化振興奨励賞、角川小説賞など受賞作多数
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学文学部卒。怪奇幻想文学のアンソロジスト、評論家として活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
14
「上空の城」はたくさんのお城(生まれ故郷の城も登場してました)の登場と求める城の妖しさに泉鏡花の「天守物語」の人外のモノが外界で人を侵食した作品という印象を受けました。2人のやり取りが微笑ましいだけに最後の別れが切ないです。「花曝れ首」は「好いた男とみる地獄や。おちとみやす」という言葉が強いです。春之助の秋童への言葉に恨みでも憐みでもない悲しみと愛おしさがあると思います。「阿修羅花伝」は孫次郎に魅入られた面打ちが自分を消せないという苦悩と死が生霊によって昇華されています。「春喪祭」は長谷寺の牡丹と女の声の2012/07/12
を
6
良すぎた。ここ二ヶ月ずっと憑かれたように耽読していた。2021/08/05
tomo*tin
6
妖艶で美しく、どこまでも幻想的な物語たち。華麗な文章に誘われ、読者は深い奈落へと旅に出る。それは、かたく煌めく、酩酊の旅。2008/11/01
ren
4
赤江瀑を読んでいると、何故か山岸凉子を読んでいるような気になる…。モチーフが近いんだろうか。それはさておき、上空の城は面白いのだがやや中だるみ気味で疲れる。春喪祭は地元県なこともあり大好き。一度花の時期に深夜の寺内に立ってみたい。奏でる艀は読後感が素晴らしい。その他も秀逸。入門書としては非常にバランスのとれた一冊かと。2010/04/02
Mark.jr
3
怪奇幻想文学のアンソロジストである東雅夫氏がセレクトした傑作選になります。収録作中唯一の長編「上空の城」はオカルト風味の恋愛もので、殺しあいや愛憎交えない男女関係は、著者にしては結構珍しいですが、"城"という伝統的要素が出てくるのは、非常にらしいです。やはり、本領は大部分を占める短編作で、特に「阿修羅花伝」は伝統芸能の業に取り憑かれた人間という、著者お馴染みのテーマで、最も個性がよく出ている作品かと。光文社からも傑作選が三冊出てますが、収録作は被ってないので、そちらもぜひ。2022/08/21