内容説明
全軍敗走の中、島津義弘軍は故国をめざし、決死の敵中突破を敢行する。世に言う“島津の退き口”である。義弘が西軍に付き、生存への執念を見せた裏には、一人の女性の存在があった!残された兵士の手記から、日本戦史上の快挙の全貌を描く。
目次
第1章 関ヶ原前夜の島津氏
第2章 義弘はなぜ西軍に加わったのか
第3章 島津勢は二番備えだった
第4章 退き口決行―前代未聞の前進退却戦
第5章 島津勢の退き口ルートを探る
第6章 亀寿奪還から帰国へ
第7章 退き口を彩る人物列伝
おわりに―退き口の総決算と義弘のその後
著者等紹介
桐野作人[キリノサクジン]
1954年鹿児島県生まれ。歴史作家、歴史研究者。歴史関係の出版社編集長を経て独立。戦国・織豊期や幕末維新期を中心に執筆・講演活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shimaosa
21
意外と一枚岩ではない島津のお家。様々なしがらみから関ヶ原に参戦せざるを得なくなった者たちの必死の退き口。海戦までくぐり抜けていたとは初めて知った。これが徳川を滅ぼす原動力となったかは不明だが、凄まじい。義弘は老年なのに生への執着はすごい。2014/10/29
maito/まいと
21
関ヶ原合戦において、撤退行動にもかかわらず、前代未聞の敵中突破を果たし、見事本国への生誕を果たした島津義弘。彼と彼を支えた薩摩島津の力の源を探る一冊は、秀吉への降伏後、領内疲弊・家中分裂・指示系統の複雑化と、よくも滅びなかったなと感心してしまうほどのボロボロ状態から分析が始まる。定説になっていた三成と義弘の不和についても最新史料を元に異議を唱えたり、義弘達の関ヶ原脱出~大坂到達までの道のり推理など、島津の底力に圧倒される内容だ。2013/05/20
鯖
14
戦国無双4に備え(ry 東軍に付くべく出陣したはずの島津が全くやる気を出す気にもなれぬ情勢を越え、捨てがまり戦法で敵中突破し、紆余曲折を経て、三成に人質に囚われていた妻子を救出し、親の仇として島津を恨んでいたはずの立花宗茂と呉越同舟、やがては手を取りあって、薩摩に戻るまでの道のり。俗説を排除し、たくさんの史料が載せられていて、ホント楽しかった。やー、これ、映像化したらさぞかし面白いだろうになあ。2014/03/17
鐵太郎
13
関ヶ原の戦場から大阪までのルートは、従来の説ではなくまっすぐ南下して鈴鹿峠から近江に入ろうとして引き返し、楠原まで回って伊賀上野から信楽を抜けて河内に入ったという説を取ります。大阪城から人質になっていた妻と息子の嫁を救出した際には面白い逸話があったようですが、割愛されていますね。また、島津勢は戦場でだんまりを決め込んだのではなく、もともとは第二陣として配置されていたので初戦では動かなかったという説を取っています。なるほど、いろいろ面白い。2010/06/28
いっち〜
5
関ケ原合戦時の島津氏の前進退却戦「島津の退き口」をまとめた本、と言っても実際は関ケ原前から薩摩到着までの西軍内や島津家内の事情等も交えてまとめられている。そういう意味では関ケ原関連の本はあまり読んでなかったので、いろいろ初めて知ることが多かった。退き口の状況や退却ルートについて描写はもちろんあるものの、基本的に史料と結び付けての淡々とした描写なので、熱い展開を期待している人には肩透かしに思えるかもしれない。ただ、情報量はかなりしっかりしてるので、読みごたえは十分。とりあえず、薩摩に行きたくなった(笑)。2016/08/27