内容説明
おきつねさんは、人を化かす。おばあちゃんは、しょっちゅう化かされる。でも、也子の前にあらわれた小さいきつねは、まあるい目をした、かわいい子ぎつねだった。―戦争の悲しみとは、あたりまえにあるやさしい時間が、とつぜん失われることかもしれない。小学校中学年から。
著者等紹介
朽木祥[クツキショウ]
1957年広島市生まれ。被爆二世。’06年『かはたれ―散在ガ池の河童猫』(福音館書店)で、第35回児童文芸新人賞、第39回日本児童文学者協会新人賞ほかを受賞。鎌倉市在住
ささめやゆき[ササメヤユキ]
1943年東京都生まれ。’95年『ガドルフの百合』(白泉社)で第44回小学館絵画賞受賞。’99年『真幸くあらば』(講談社)で第30回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。鎌倉市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
72
良質の物語。也子のおばあちゃんはしょちゅう「おきつねさん」に化かされる。おかあさんも子供の頃に一度だけ化かされた。そんなある日、也子も不思議な子ぎつねに出会います…。懐かしい田舎の風景。牧歌的で優しいふたりのやりとり。子ぎつねの無垢なしぐさが堪らなく可愛い。でも時代は太平洋戦争真っ只中、そしてここは広島…。あたりまえの日常が突然失われる哀しさ。それまでの雰囲気が優しいものなだけに一層切ない。子ぎつねの健気な姿が目に浮かぶようです。2018/10/25
ヒラP@ehon.gohon
38
被爆二世である朽木祥さんが、戦争の悲惨をこのようなメルヘンに仕立てた意味を考えました。 こぎつねと少女のやりとりは、とても可愛らしいのですが、上空をB29が飛び、空襲警報がなり、最後には広島原爆に遭遇するとき、ふたりが遊んだ竹やぶは非現実の世界、どちらかというと心の中の世界として瑞々しく感じ取れました。 ささめやゆきさんの絵で、ファンタジーのようになったこの作品ですが、とても奥が深いと思います。2021/08/12
かもめ通信
20
とんとんとリズムにのって語られるのは、おばあちゃんのはなし、おかあさんのはなし、少女とちいさな子ぎつねのはなし。なにげない日々のやわらかい会話の中に、空襲警報の音や空をとぶ爆撃機の影が見えかくれする。それでも思わずほおをゆるめて声を出し、調子をととのえ読みたくなる。そんなほほえましい物語が、あの八月六日の朝を境に一変する。きつね、こぎつねわたしもね。かのこちゃんとおんなじで あんたに化かされてみたかったよ。2014/09/13
ぱせり
18
反戦を声だかに叫ぶことも大切でしょうが、大きな声は頭の上をただ通り過ぎていくだけかもしれません。衝撃的な映像は人の神経を麻痺させていくかもしれません。作者はことさらに声を落として、まるで詩のように静かに語る。小さい命の愛しさを、美しさを。あたりまえの日々が、あたりまえの風景が、揺さぶられることなく、いつまでもいつまでもただあたりまえにあればいいのに。2009/09/20
ふじ
17
読みたい本にいつか入れた本。昭和の農村が舞台。方言は広島。代々キツネにばかされてきた家の子どもとこぎつねの交流が描かれて…と思ったけれど、時代背景と広島という時点で気づくべきだった。当たり前の平和は、あっという間になくなるもの。2023/07/21
-
- 電子書籍
- 住まいと暮らしe-Books VOL.…