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出版社内容情報
斉藤勇魚と斉藤真魚。男女の双生児でともに二十歳の大学生。二人の人生は、年の離れた弟の誕生で一変した。
広島の大学に通う勇魚は親友に恋人を奪われ荒んだ日々を送り、北九州の実家で暮らす真魚も最愛の人に突然捨てられ世界に絶望する毎日。
そして二人は、奇しくもそれぞれの隣人との奇妙な交流に救いを求めていく……。
やがて気付いてしまった家族の真実。親子、恋人、親友――すべての日常が絶望と綯い交ぜとなった双子の青春の行き着く先とは?
大人になることの「痛み」をリアルに描き、第31回電撃小説大賞で《メディアワークス文庫賞》《川原礫賞》をW受賞した、ままならない愛と青春の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cinos
31
恋人と友人に裏切られた兄と、おばに恋する妹の双子の心の痛みを感じる青春小説。母親の毒親ぷりも痛い。2025/04/28
よっち
22
親友に恋人を奪われ荒んだ日々を送る広島の大学生・斉藤勇魚と、北九州の実家で最愛の人に突然捨てられ絶望する双子の妹・真魚。彼らの人生が年の離れた弟の誕生で転機を迎える青春小説。転居した先でお世話するようになった年上のお姉さんに癒やされる勇魚と、絶望の末にずっと寄り添ってくれた幼馴染の存在に気づく真魚。奇しくも隣人との交流に救いを求めた双子の何とも近くて対照的な関係性があって、建前を崩さない親に対する絶望が描かれる中で、大人相手に辛酸を嘗めてきた飯田の達観や、真魚の味方であり続けた市原の姿勢が印象的でしたね。2025/04/29
椎名
7
正直なところタイトルと表紙にピンとくるものがなく悩んでいたのだが、店頭で見るとなんとなく気になってしまって購入。そのときの自分を褒めてあげたいくらい良かった。文章、内容共にかなり人を選ぶ癖の強い作品ではあり、これがラノベでも一般文芸でもないライト文芸という市場で出たことはなかなか驚く。文章自体は軽口でありつつも比喩表現等が多彩で、叙情的。別々の場所で暮らす男女の双子の語りが順番に描かれるが、めちゃくちゃな変遷を辿りながらも噛み合っていく様は確かに量子もつれと表現するに相応しい。注目作家ですね。2025/04/26
bluets8
4
男女の双子に起きる人生の悲喜交々。子供とは言えないけれど、大人にもなり切れない大学生の日常を切り取った青春ストーリー。大人の狡さや他人の身勝手さに振り回され、世間や他人に対する怒りや悲しみ、何事も上手くいかないもどかしさ。日々積もっていく行き場のない鬱憤や不安感を、何気ない日常の中で鮮やかに描写する、なんとも形容しがたい感覚の物語だった。性の描写が濃くて生々しかったり、ある親戚の行いが普通に犯罪で眉を顰めたり、読み心地が良いとは言えないのに、何故か惹かれて最後までスルッと読めてしまう不思議な魅力がある。2025/04/28
kokekko
2
2020年代を舞台にしたライトな村上龍系……か……? セックスにまつわる描写が多いので、レーベル的に子どもと一緒に読んでいる人には注意が必要。こういう話ですと説明できるような物語とは少し違うのだが、ぐいぐい読ませる話ではある。しかし自分が一番面白かったのは、作者がnoteで公開している「SHN」という記事の『過去の自分に、あなたがデビューするまでには35年かかりますと言ったらどうなるだろう。絶望するのではないだろうか』というエッセイだった。それでも前に進む作者に喝采。2025/04/28