内容説明
「老いを迎える」とは如何なるものか、「死と向き合う」とは如何なることか。墓を決め遺言書も書き身辺を整理して死ぬ準備はしたものの、乞われれば番組やステージで歌って踊る、こけつまろびつ迷い戸惑う93歳の老境の日々から見えてくる、「老い」の本質と現実。
目次
第1章 想定外の晩年(アンパンマンの遺書について;ボチボチ墓地 ほか)
第2章 狼爺さん(くだらない願い;巨匠にはなりたくない ほか)
第3章 老いるショック(最後の一冊;口述筆記 ほか)
第4章 ああ!少年は老いやすく(老年スベリ台;幸福な死に方 ほか)
著者等紹介
やなせたかし[ヤナセタカシ]
1919年、高知県生まれ。漫画家、童話作家、詩人。日本漫画家協会会長。東京高等工芸学校図案科卒業。73年、月刊絵本「キンダーおはなしえほん」に「アンパンマン」掲載以降、人気シリーズとなり、88年から日本テレビ系にてアニメ化。童謡「てのひらを太陽に」の作詞家としても知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともとも
33
ご自身の病気や、大切な人との別れといった辛さ・悲しさを抱え、 老いということ、死ということなどについて考えながらも、 人に喜んでもらう、世の中の役に立つ為に一生懸命に自分らしく、楽しく生きている。 やなせさんの覚悟と優しさと強さ、そしてユーモア溢れる人柄が、 アンパンマンのように多くの人々の心に勇気や希望を与えながらも救っている。 そんな、やなせさんに励まされながらも、自分らしさや人への思いやりだけは 忘れたくないなぁ~としみじみ思ってしまいました。 そんな楽しさと温かさが溢れる1冊で良かったです。2015/07/30
白義
21
迫り来る死の影を、老いから押し寄せる衰えをこれほど濃厚に刻印しながら、読んでいて暗さを感じさせる部分が全くない。まだ生きていたい、という鮮烈な意志が息づきながら、しかしやがて必ず来る死を拒まず、どんと来いという風情だ。やなせ先生が死んだときは信じられぬ思いがしたが、本書を読み、その数々の大病歴を聞かされてもなお、やはり信じがたい思いに駆られる。何せ、この本のページを開けば彼の言葉があまりにありありとこちらに迫ってくる。亡くなった妻、特攻兵器回天の訓練を受けていた弟への言葉が胸に来る2013/10/24
Yuichiro Komiya
10
アンパンマンの作者やなせたかし氏が93歳の時に書いたエッセイ集。老いと死がテーマだが、しっかりした明るい口調の文章でとても93歳とは思えない。周りの友人が次々いなくなって、自分もそれほど長くは生きられない。それでもたくさんの仕事をこなし、歌を歌って人生の素晴らしさを語る姿には感動した。94歳で亡くなられたそうだ。2015/03/21
🫧
9
★★★★老いること、死ぬことをテーマにしたやなせたかしさん93歳のときのエッセイ集。 *とても読みやすい文章です。なのに、一つ一つの言葉が重い。やはり長生きしたぶん、背負ってきたものも多い。死ぬことにたいしての思いは心に響きます。このエッセイ集が出た翌年に亡くなっています。亡くなられる前にこのエッセイ集がでてよかった。読んでよかったです。2015/11/18
ジョナ
8
やなせたかしさんが93歳で書いた「死と老い」をテーマにした晩年のエッセイは、読みやすく、しっかり重く、しかし明るい。65歳の頃に「アンパンマン」が大ブレイクし、73歳で妻に先立たれ、想定外の晩年は、次々にやって来る病気、仕事と闘い続けた。墓地と遺言書と辞世の句を準備し(「ごめんなさい。ありがとう」)ても、生きることを諦めなかった。天命つきるその日まで、好きな仕事を続けた。やなせさんの子どもたち(アンパンマンを始めとした二千余のキャラクター)は、今の、未来の子どもたちをずっとずっと、元気に励ましてくれる。2016/12/17