出版社内容情報
歳月の帰化を思へり午睡より覚めて肌には藺草(ゐぐさ)がにほふ社会の大きな出来事も、身辺の小さな出来事 もまるで帰化していくように忘れられていく時代 。それだけに歌に託してのこしておきたいという 思いは以前にも増して強くなった―待望の第七歌集。
阪森 郁代[サカモリ イクヨ]
1947年三重県生まれ。84年、第30回角川短歌賞受賞。89年「玲瓏の会」入会。歌集『ナイルブルー』『パピルス』『ボーラといふ北風』など。
感想・レビュー
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双海(ふたみ)
9
歌集タイトルは次の歌から。「歳月の帰化を思へり午睡より覚めて肌には藺草(ゐぐさ)がにほふ」 社会の大きな出来事も、身辺の小さな出来事もまるで帰化していくように忘れられていく時代 。それだけに歌に託してのこしておきたいという思いは以前にも増して強くなったという。2023/10/06
ダイキ
6
「初めての、と言ひかけて口ごもるその場かぎりのやうで風花」・「静けさを啄ばむのみの秒針は冬の日差しの届かぬ位置に」・「夏の日に背を向けてゐる向日葵の何も起こりはしない前触れ」・「ヨブ記から少しはみ出す付箋あり花水木すでに花期を終へたり」・「それぞれの朝をうべなふ鰯(サーディン)にはレモンの呪文 ほんの数滴」・「歳月の気化を思へり午睡より覚めて肌には藺草がにほふ」・「物語のなかに降る雨 〈gentle rain〉 は 〈恵みの雨〉 と訳されて降る」・「八月の日照りのあとに実を結ぶ花であること他者であること」2022/03/11