出版社内容情報
前歌集『夏・二〇一〇』から5年。「河野裕子に出会ったことが、私の人生のすべてであった・・・」妻、河野裕子亡き後に紡いだ渾身の第13歌集。
内容説明
午後の庭に、妻在りし日の記憶と現在の孤独な日常が交差する。出逢いの時から惹かれあい、ともに生きてきた妻河野裕子を失って7年。残されたものとして、悲しみに向き合い、歌い続けた日々の至純の531首。第十三歌集。
目次
二〇一一年(日本手拭;鼻と親指 ほか)
二〇一二年(柿紅葉;竹箒 ほか)
二〇一三年(にほどりの;天狗舞山廃仕込み ほか)
二〇一四年(危惧;ヘリコバクター ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てん
11
図書館本。妻が亡くなって間もないころから、その3年ほど後までの歌がおさめられた歌集。初めのほうはやはり、亡くなった妻にまつわる歌が多いが、その中で起きた東日本大震災は、長歌となった。衝撃の大きさが推測される。月日がたつにつれ、一人暮らしに慣れていく様子、でも時折寂しさも顔を出す。「ホバリングしている蜂はくまんばちそれ以上来るな近づくなつてば」2021/12/09
双海(ふたみ)
8
午後の庭に、妻在りし日の記憶と現在の孤独な日常が交差する。出逢いの時から惹かれあい、ともに生きてきた妻河野裕子を失って7年。残されたものとして、悲しみに向き合い、歌い続けた日々の至純の531首。第十三歌集。「晩年とふを持たざりし君の悔しさを誰かがわかつてゐてはやらねば」「歳月のすみずみになほ咲き残るひとつふたつと紺のあさがほ」「終点まで一緒と言つたはずなのに途中下車して風草そよぐ」2023/06/27
yumicomachi
5
2011年から2014年までの短歌作品531首と、長歌一編が収録されている著者13冊めの歌集。あとがきに本人が記している通り、2010年に亡くなった伴侶・河野裕子の歌がたいへん多いことと、東日本大震災を詠んだ長歌のあることが特色。長歌の反歌は〈ひとりひとりの死者には家族のあることを嘆きとともに思ひゐるべし〉である。〈歳月のすみずみになほ咲き残るひとつふたつと紺のあさがほ〉〈池底の石はしづかに日のひかり月のひかりを受けて老いゆく〉などの歌が美しいと思い印象に残った。2017年12月刊行。2019/02/20
玲
5
2011年の部分はとても読むのが辛かった。何を見ても何を聞いても亡くなった妻を思い出すばかり。家族を、愛する伴侶を亡くす辛さについて、私も思うところがあったので、辛かった。そこに震災の長歌。色んなことを思い出してしまった。だけど、ここからは少しずつ忘れて膿む傷が平癒されてゆくはずと希望を持って読んだ。後半は、その希望の通り、娘や猫の歌が明るく響いた。自らの老化を揶揄して独居老人を題材とするなど、くすりと笑ってしまうところも多くあった。そして思い出す若かりし日々の熱さ、かなしみ。更に深まって良かった。2018/04/01
浦和みかん
1
読んでいて作者に「歌を作ろう」という気概、言い換えれば硬さを感じさせないような歌が多い。あまり短歌を読んでいる感じがしない。永田さんは口語を軽くさせないために旧仮名を使っている感じがして興味深い。三首<語るたび少しづつ君がずれてゆく ま、いいか 夏至の日の立葵><六十代の体力だねと馬場あき子わが背をぽんと叩きて去りぬ><それがなぜあなただつたか夕暮れの火に火を足してまた思ひをり>2018/01/18
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