翼に息吹を

翼に息吹を

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  • サイズ B6判/ページ数 298p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784048741859
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

昭和20年、知覧。特攻機の整備を担当する須崎少尉は、死に向かって旅立つ戦友たちをひたすら見送り続ける。そんな自らの存在に少なからぬ屈託を覚えつつも、淡々と激務をこなす須崎の前に、不吉な影を纏った特攻隊員・有村少尉が現れる。何度飛び立っても「機体の不調」を理由に戻ってくる有村に基地の空気は冷たい。しかしそれに同調できない須崎は、この戦場で決定的に自分が「局外者」であることを思い知る。そして5度目の飛行で有村が自ら命を絶ったとき、須崎の中にある衝動が生まれ―戦後世代だからこそ描き得た、こよなく切実な戦争文学。

著者等紹介

熊谷達也[クマガイタツヤ]
1958年宮城県仙台市出身。東京電機大学理工学部数理学科卒。中学の数学教諭、保険代理店業を経て、97年『ウエンカムイの爪』でデビュー(小説すばる新人賞)。2000年『漂泊の牙』で新田次郎文学賞。04年『邂逅の森』で、初の山本周五郎賞、直木賞ダブル受賞。仙台市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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いつでも母さん

109
さすが理工学部出の熊谷さん、飛行機の、戦闘機の、特攻機の座学をした気分です。が、私の脳はそれには反応せず(汗)劣悪な機体や部品を整備し、次々に送り出す須崎少尉や中川軍曹の気持ちに。又何度も戻って来た特攻隊員の有村少尉の心に寄り添って読了した。不時着したグラマン機を見分した須崎が「この戦争に勝てるわけがない」と口を突いた言葉は真実。そうさ神風など吹くはずがないのだ。知覧基地が終戦を迎えて、須崎がその後抱えて生きるには余りにも重すぎる数年の事実。狂気の事実だ。知覧の町には今年も静かに桜が咲いただろうか。2016/05/14

キキハル

33
戦争末期、特攻隊の戦いを整備兵の立場から描いた物語。機体を整備し飛べるようにすることは、すなわち特攻隊員を死地に送り出すことだ。面を上げ覚悟を決めて清々しく飛び立つ若者よりも、幾度も不具合を騙り基地に戻ってくる有村少尉が深く印象に残った。若妻に未練を残してか、死を恐れてか。懊悩し尽くした彼は死に方くらい選びたいと思ったのか。そんな弱さがとても人間らしいと感じた。整備班長、須崎少尉は特攻の意味、戦争の意味を常に考えていた。戦後60年以上たち彼の遺志を継いで平和の意味を考えていくことは、私達の使命なのだろう。2011/05/22

うさっち

28
特攻を描いた小説は何冊か読んだことがありましたが、整備兵目線の物語は初めてだったので新鮮でした。ただ専門用語は難しく少し飛ばしてしまいました。特攻させるために機体を整備するって、想像しただけで胸が苦しい。「靖国で会おう」と死を決意し飛び立つ者もいれば、残した者を想ってか死ぬ覚悟ができず戻ってきてしまう者など様々で、そんな戦友達を見送る心情が淡々と描かれていた。2016/01/07

ゆみねこ

27
死地に赴く特攻隊員を後方支援した整備担当の須崎少尉。旅立つ若き戦友たちをひたすら見送り続ける彼の前に、「機体の不調」を理由に三度も戻って来る有村少尉が現れる。負けが分っていても命を投げ出さずにいられなかった戦争末期の重苦しさややりきれなさ。こんなことが二度とは起きて欲しくないと思いつつ読了。2012/09/19

さんつきくん

23
戦時中、鹿児島県知覧は特攻隊員の前線基地だった。主人公須崎少尉は整備班の班長で、機械いじりが大好き。散りゆく若者達の特攻機を整備をしていた。整備士の立場であの特攻を見て思いを寄せる小説。万全な状態で隊員を送りたいと言う思いと彼らをもう死なせたくないと言う葛藤が描かれていく。一番は有村少尉エピソードが強烈だった。送られてくる飛行機や部品の粗悪さ、その他もろもろで敗戦を意識して行く。その中で何を残したらいいのかと言う思いが強くなる。最初の専門用語は解りにくかったけど、それ以外は興味深く読めた。2013/10/30

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