内容説明
物の怪か幻影か。牡丹の季節に失われた、淡い恋。江戸の若き絵師は、亡きお露を追い求め―。幻想根岸怪異譚。
著者等紹介
領家高子[リョウケタカコ]
1956年、向島生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科中退。95年『夜光盃』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
49
江戸は根岸の里・建徳寺の襖絵を書こうとするまだ若い絵師丈岑。彼を巡る連作短編。怪談というよりも、ふかしぎ、夢幻、つまりは、ゆめとまぼろしの話。ここぞという場面場面で色鮮やかな映像が脳裏に浮かぶ。つまりは絵画的な傑作です。想いと言うものは色を成すのでしょうか。2011/02/13
藤月はな(灯れ松明の火)
11
江戸の後期、年若き絵師が出会うのは彼岸と現世の境目に存在しているかの如き儚きもの達と切なき愛情でした。夢の桃源郷で語られているような雰囲気に陶然としてしまいました。美の境地とは建徳寺のような場所を指しているかもしれません。「静謐を求められる夢の世界に人の欲や思惑が絡むとなくなってしまう」という事実に納得しつつも悲しくなってしまいました。襖絵はお目に掛かりたいものです。2011/06/09
うさこ
6
牡丹灯篭をベースにした怪談かと思いきや、全然違いました(^^;。若い新進の絵師が、襖絵を描くために住み込んだお寺で1年の間に起きる不思議な出来事や、出会う人との交わりを、高等遊民のような暮らしの中で、ゆったりと味わう話でした。2010/09/25
ハルト
4
静謐さに包まれる幻想唯美な怪談でした。艶やかでありながら物悲しい、江戸根岸の建徳寺にてまだ年若い絵師が出会う怪異たち。すうっと物語という夢世界に入りこんでいくような心地になりました。2010/11/04
いずみんご
3
他の方のレビューにもあるように、まったく怪談ではなく、むしろこの世の者ではない、異界の者が現れる幻想的な物語だった。主人公の初恋と喪失、そして成長。確かに全体を通してトーンも内容も地味。でも静謐で穏やかなトーンが、連休で浮ついた世間と乖離していて、なんだかちょうどよかったような。読んだ直後にも関わらず、早くもぼんやりとした印象しか残っていないけれども。2022/05/08