内容説明
日本産業銀行上海支店の江草雅一は、「日中が協力すれば世界最強」という信念のもと、中国投資課(通称・動物園)で日本企業の中国進出をサポートしている。デジタルカメラが世界を席巻する前夜、日本最大のフイルムメーカー・浅間フイルムは、従来型の写真(銀塩)フイルム生き残りをかけ、最後の市場を中国に求めようとしていた。しかし、先に中国進出を果たした米国系のウエスティンフイルムは、これを妨害すべく、投資銀行・モルゲンゴールデマンに杜愛蓮をスカウトする。中国民族資本・チャンスフイルムとの提携をめぐって、両社は熾烈な競争を繰り広げるが…。中国政府の思惑、背後にうごめく汚職、そして、仕掛けられた罠。巨大市場を制するのはどちらか?果たして真の勝者は誰か?世界最強のプロジェクトが始動する。長編経済小説。
著者等紹介
深井律夫[フカイリツオ]
1966年兵庫県生まれ。大阪外国語大学中国語学科卒業。上海復旦大学に留学。2度にわたり城山三郎経済小説大賞最終選考に残る。『連戦連敗』がデビュー作となる。銀行勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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R
25
中国ビジネスを舞台にした経済小説でした。どうして中国との仕事がうまくいかないかについて、その根幹にあろう、人同士のつながりについて考えさせられる内容でした。信じることや、お互いを認めるということが言葉だけではなく、真からできるようにならなくては信頼というものは生まれないと当たり前なんだが、人種という色眼鏡によってできていない事実が浮かんできます。哀しい事件を経ながらも、物語は大団円で終わって非常に清清しく、面白い小説でした。2017/11/07
ろーれる
3
小説なかで名言が多用されてちょっと閉口するところもとちょっとご都合主義的なところがあるが、展開は早く、読むやすかった。これがデビュー作ということで、次を期待したい。2011/03/12
新山下
2
中国通の著者によるチャイナビジネスの経済小説。主人公は20代の若者で親友が自殺したものの、中国人のパートナーと共に獅子奮迅の活躍により概ねハッピーエンドとなる。百戦百敗して101回目の戦いに勝利して天下統一を成し遂げた漢の劉邦を思わせる。古典の漢文もあれば経済金融の専門用語もある文章だがストーリーは楽しく読めた。2014/08/30
パクチー
2
ビジネスの切り口を見出すセンスと足で稼いだ情報によるプレゼンで案件を具体化する主人公。案件をインターセプトして妨害する外資コンサルと中国企業側の妨害のやり口が半端なくアクション映画のよう。経済小説の枠におさまらない傑作でした。2013/03/03
都人
2
予想外に面白い小説だ。著者は上海の大学に留学経験があるそうだが、漢詩や中国の「慣用句」にも詳しく、中国の政府や共産党の思考過程も、事実かどうかは別として、興味深く読んだ。城山三郎経済小説賞の本を二冊読んでいるが、受賞に十分値する作品だ。2012/02/29