内容説明
少女マミコは、渚に漂着した木馬と壊れた角を見つける。気がつくと彼女は、時の止まった海岸にいた。マミコの真っ黒な影が立ち上がって分身となり、悪魔の子マコを名乗る。角を抱き「世界の果てに名前と角を捨てに行く」と言い、水平線の彼方へかき消えてしまうマコ。だが、角をとられた木馬が、白毛の馬となって現れる。少女と白馬は、マコを追って時の止まった海へと駈けだして―。美しく幻想的な世界を旅する二人の少女。泉鏡花文学賞作家が描く、壮大なファンタジーの幕開け。
著者等紹介
寮美千子[リョウミチコ]
1955年、東京生まれ。86年、毎日童話新人賞最優秀賞。以後、絵本や小説、ノンフィクションで幅広く活躍。天文学・地球生態学・先住民文化を融合させた独自の世界を展開している。05年、『楽園の鳥カルカッタ幻想曲』(講談社)で泉鏡花文学賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
菜花@ほのおかくとう協会門下生
16
あちらとこちらの世界へいったりきたりするので、慣れるまでは大変です。言葉はキラキラで、物語はふわふわしているのですが、例えば神殿の描写なんかはとても細かいです。読めば読むほど引き込まれる感じです。ここまで宙に浮いたファンタジーは初めてかもしれません。でも、舞台は日本で、千葉県なんですよね。兎にも角にも、下巻を早く読まなくては。2014/02/24
温
6
幻想的なイメージの断片が互いに繋がり合い、響き合ってえもいわれぬ美しい世界を創りあげていく。その中を旅してゆくことに、魂の底から震えがくるような喜びを感じた。すごい物語に出会ってしまった。2010/03/18
エビノート
5
夢を閉じ込めた雲母が採掘される島の描写が美しい。雲母しかり、円な月を映した黒曜石の器の水、水の龍と火の竜が繰り返す転生の姿、瑠璃の玻璃でできた月の護符…。描かれる世界、小道具が一つ一つ素敵。もちろん、美しいばかりではなく怖ろしげなものもあるけれど、描かれるファンタジーの世界にうっとり2009/08/18
二藍
4
読むのが大変だった。文章はすごく綺麗だし、設定もそれぞれ面白いんだけど……。さすが泉鏡花文学賞受賞作家というだけあって、幻想的なのにひどく断片的で、くるくる迷宮をさまよっているような。上巻の見どころはやっぱりおじいさんと可愛い孫のマーミンカ、そして郵便配達夫の穏やかな日々。月が象嵌されたシガレットケースとか、鉱石ラジオとか、雲母や白い巻き貝、花梨酒などなど、小物がいちいち素敵。『La Wally』も聴いてみたいと思った。2013/08/02
織町
4
寮美千子さんの紡ぐ物語は、鉱石探しのよう。あちこちにちらばる文字は結晶となり透明な水晶や瑪瑙、雲母や蛍石、電気石、作中に出てくる晶洞のようにきらめき合い、透明な音を奏でる。美しい石達をもっと眺めたくて頁をすすめてしまう。本当の名を奪われたミコは名を棄てようと世界の果てを目指すもう一人の自身・マコを追いかける。2012/10/17