出版社内容情報
閉ざされた過去と心を溶かす、「ふしぎ百物語」が幕を開ける!
語る者、語られる者、救われるのは誰か?生きながら、心を閉ざす者、思いを引きずり、生きる者。心を残し、命を落とした者。そして、人の心の闇に巣くう、人外のもの─。長い長い、「百物語」の始まりだった。
17歳のおちかは、川崎宿で旅籠を営む実家で起きたある事件をきっかけに、他人に心を閉ざした。いまは、江戸・神田三島町に叔父・伊兵衛が構える袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働く日々を過ごしている。ある日伊兵衛は、いつも碁敵を迎える「黒白の間」におちかを呼ぶと、そこへ訪ねてくる人たちから「変わり百物語」を聞くように言いつけて出かけてしまう。そして彼らの不思議な話は、おちかの心を少しずつ、溶かし始めていく・・・。おちかを襲った事件とは? 連作長編時代小説。
内容説明
17歳のおちかは、実家で起きたある事件をきっかけに、ぴたりと他人に心を閉ざしてしまった。ふさぎ込む日々を、江戸で三島屋という店を構える叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働くことでやり過ごしている。そんなある日、叔父・伊兵衛はおちかを呼ぶと、これから訪ねてくるという客の対応を任せて出かけてしまう。おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。いつしか次々に訪れる人々の話は、おちかの心を少しずつ溶かし始めて…哀切にして不可思議。宮部みゆきの「百物語」、ここに始まる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
340
江戸物・世話物・心温怪談。恐いので5話の間に休憩を入れながら読んだ。袋物屋の三島屋の黒白の間。囲碁をするための部屋だった。長兄の娘、おちかが、訪れた人から話を聞く。「百物語事始」と副題にあるように、最初の5話分が入っている。そのうちの一つはおちか自身の物語。5つの話がめぐりめぐって、最初の段落が終わる。一つづつの話は「おそろし」いので書けない。「家の光」2006年1月号から2008年7月号の連載。単行本化にあたり、加筆訂正とのこと。比べてみるのも一興。書いとかないと雑誌のある図書館に行った時に忘れるため。2013/05/27
文庫フリーク@灯れ松明の火
264
【貌言は華なり。至言は実なり。苦言は薬なり。甘言は疾(やまい)なり。宮部は慈愛なり】すれ違う心と心が招いた惨劇。自責の念に心を閉ざすおちか。伯父で主人の代役としてもてなした相手は、碁好きの伯父が黒白の間と名付けた部屋から見た、庭の曼珠沙華の花に蒼白となる。おちかに何か通じる物を感じた客人が、生涯胸に秘めてきた出来事と想いを語ったことをきっかけに、伯父の荒療治・おちか一人を聞き役に、五日に一人の割合で、不思議で妖しい話をするお客を募る変形百物語。善も悪も、清濁併せ持つのが人間。客人の語る物語は、時に懺悔→2013/07/10
takaC
242
なんとなくそうだろうと思っていたら、案の定シリーズ物なのですね。面白いのだけど(本が)厚いですね。次のはどの本だ?2014/10/06
kishikan
175
先に感動のあんじゅうを読んでしまったので、おそろしは興ざめになるのではと心配しましたが、いやどうしてどうして。おちかが叔父の営む三島屋に預けられた理由や黒白の間で人の語りを聞くことになった経緯などは、2作目を読んでしまったのでもたつき感がありました。でも話が進み、おちかを始めとする登場人物や語りにまつわる怨念の連関性が深まり、最終話の「家鳴り」に至っては誰もが圧倒されるでしょう!亡者、異界、恨み、妬み、それにタイトルからは怖さが目立つホラーのようですが、読後は切なさと哀愁の混じった静かな想いに包まれます。2012/04/24
紅はこべ
165
最初連作短編集かと思って読み始めたのだが、個々の物語の繋がりが強いので、長編に近いかも。人を呑み込む怪しい、それでいて美しい屋敷の佇まいとか、目指すところは江戸を舞台としたゴシックホラーかな。屋敷、鏡、植物など、道具立てはホラーとしては結構ベタ。黒絹の布団のエピソードなんか、宮部さんには珍しく官能的。ところでお彩と市太郎は肉体関係があったのかな。道ならぬ恋とはいえ、心で思い合っていただけなら、2人が受けた扱いは気の毒な気が。おちか自身の過去の設定は『嵐が丘』を連想させた。2011/02/09
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